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得ざれば或草を喰て吐者也疵を被れば己れが舌にてねぶり直也いたち
鼠と闘て手を負へばるうだといふ草を以ていやす者也山猪は
病あれば蔦を喰て則愈ゆ熊は若誤てまんだらごらといふ毒草を
喰へば蚊を食して直る也でるひんといふ大魚は海中にすむ猿を喰て
薬とし獅子王は猿猴をくすりとす狐の為には松脂くすり也熊の
疵を被るにもある草を付れば則平愈すといへり
又魚鳥の春秋に拪家を摸ふるも養生の為也至て寒を苦しむ
鳥は秋来れば寒国を捨て暖国に移る也極めて暑を痛む鳥は春に
なれば暖国を去て寒国に至る也是皆身の養生に非ずやぽるつがると
いふ国の東海にさし出たるみさきあり数十里を隔てむかへはあひりかと
いふ暖かなる国なるが故に秋の中比いろ〳〵の小鳥ども幾千万と
いふ数を知らず彼みさきに集りて暖国のあひりかへとび渡る也早く
来れるは重き鳥をみさきにて待合する間に日数を経るが故に漁師
其時節を能知て多くの鳥を取者也魚類も又如此し春秋に居所を
摸ふる事時に応じてすみよき所を求むる故也中にも子を産時分
には水の加減専要なるによて常の居所をかへて他所へ移り行也其外
魚類鳥類の天気を量て身の用心をする事も又養生の一事也
【枠外左 初巻三十九】