翻刻
【右丁】
東夷(やろう)の一粒金丹見るやふな。体中(からだぢう)【體】か金箔
でもあるまいし。やはり我侭(わがまゝ)な我等(われら)なれは。
地獄の内が心易と。打解(うちとけ)た蛮内(はんない)が様子(ようす)。大王も
大きに安堵(あんど)し。是からは先生にも少しも
心遣ひなく。万事 地獄(ぢこく)の繁昌(はんぢやう)と。欲(よく)【慾】で堅(かため)た
仏世界(ぶつせかい)。《割書:コレ〳〵》皆々よろしく御頼申せと。大王の
差図に。くやしさをこらへし。十王(ちうわう)俱生(ぐせう)獄卒(ごくそつ)
ども。《割書:ハイ〳〵》なんにも知らぬ不調法者(ぶてうほふもの)と。どふやら
【左丁】
姫(ひめ)小松の三段目のよふで。蛮内も笑をこらへ。
兎角(とかく)是から地獄の銭【右に付け足し「もふけ」】万する様に。我等も
何でももふけ事を按じてみん。しかし大王
にもなんぞ。よき了簡(りやうけん)あらは我等に延慮(ゑんりよ)はい
らず。知恵(ちへ)の有たけ打 明(あけ)給(たま)へと。蛮内に
とわれて。大王も大きにこまり。五文でかつた
紅花膏(かたへに)何とも知恵はなし。少しの了簡を
いつても。突(つき)こまれるは知れた事。言ふもうし