翻刻
【右丁】
多し。是(これ)血(ち)の池に流れ出るもの也。丹砂(たんしや)は
世 俗(ぞく)に言ふ処の辰砂也。中華辰列より出 ̄ル物
を。上品とす。是を辰砂といふ。然(しか)るを俗人
都(すべ)て。丹砂を辰砂といふ。丹砂の上品なる
もの辰砂也。日本にて越(ゑつ)中の立山。出羽国(ではのくに)
湯殿山(ゆとのさん) ̄ニ血(ち)の池有り。水血の如し。ある無漸(やんごとなき)
御方。此池の水を汲(くみ)こし。底(そこ)の泥をとり。
試(こゝろみ)るに。丹砂(たんしや)の甚下品にして。若。これ
【左丁】
山中より。おのれと流(なか)れ出。水中に溜(たま)り
たるもの也。是を以て見る時(とき)は。日本のは
下品。剣の山より自然(しぜん)と出て。血の池に溜る
ものは甚上品。中 華(くわ)辰列より出るものと同物
なり。又は大地獄 烈(れつ)火 燃(もへ)出るは。是皆〳〵
硫黄([い]おふ)の精華也。奇とするにたらす。温泉(おんせん)
も皆硫黄の精華也。日本 越後(ゑちこの)の国(くに)蒲原(かんはら)
郡(こふり)。如法寺村 土(ど)中より。出る陰火皆同物也。