翻刻
【右丁】
いふ道有り。此大通の名 古来(むかし)は通者と言う。
近世 風流家(ふうりうけ)。通 者(もの)を略し通といふ。通の
上 品(ひん)成(な)る者を大通といふ。京都にて方言(ほうごん)に。
粋(すい)【砕は誤記】といふ。又 釈名(しやくめう)に。わけしりといふ。此道通神
を祖(そ)となし。諸(しよ)事 万物(ばんぶつ)に通る道也。大王若し
万物に。通ぜんとおもひ給(たま)はゝ。此神の道を守り
給へ譬(たとへ)は如来の道に入て。僧と成ることく。頭を
東夷(やくら)に剃(そ)り。髪を本多【注】に結。白銀にて拵へ
【左丁】
たる。重(おも)く太(ふと)きくわへにくき煙管(きせる)をもち。
万人とのやうに誹(そしる)とも。随分(ずいぶん)大頬(あふづら)竦し。何事に
よらす。ものことを流し。毎朝起ること九時分。
歯を磨(みかく)く【語尾の重複】こと半時位ひ。飯(めし)一椀(いつはん)にして大酒(たいしゆ)
一日に三度。右(みぎ)法(ほふ)を行(おこのふ)時は。此神守り給ふ。
此行(このぎやう)三年 勤(つとめ)る時は。大通となること疑(うたかい)なし。
若(もし)大王(たいおふ)万物(はんぶつ)に。通(つう)ぜんと思ひ給はゝ。よく〳〵
此道を行(おこな)ひ給へ。大王少し是にこまり。
【注 本多髷のこと。江戸中期以降に流行した男子の髪型。中ぞりを大きく、まげは高く結び、鬢(びん)には油をつけないでくしの目を通し後の方に油をつけたもの。通人、遊び人が好んだ。】