翻刻
【右丁】
それは余り迷惑(めいわく)な行(おこな)ひやふ。外に仕様(しやう)は有
まいかと尻込(しりこみ)も尤。蛮内は奴にさへすかれは。和唐(わとふ)内
此かたの当(あたり)と。是大王それは余りきたなきこゝろ
幾(いく)万人の善悪(ぜんあく)を糺(たゝ)す。地獄の親玉(おやたま)が不適では
すまず。夫とも是悲(ぜひ)にいやならは。我等しかた
なし。此上とも地獄 不繁昌(ふはんせう)もかまい申まい御 思召(おほしめし)
次第とひんと【注】すねられこれさ先生とふ
いへはかふ言ふと足下(そつか)の教(おしへ)なれは我は少しも
【左丁】
いとわぬが。十王達(じうわうたち)はいがゝ【濁点の位置違い】の了簡(りうけん)と。閻王(ゑんわう)か言ゝ
出せは。固(もと)より糞(ふん)はあれとも。別のなき十王
獄卒(こくそつ)。大王の承知の上へからはと。大勢が
一同(いちとふ)に。何がさて〳〵との挨拶(あいさつ)。蛮内は矢口の
狐場(きつねは)を思ひ出し笑(おかし)し【語尾の重複】さをこらへ。そふ
皆々の心が。一決(いつけつ)するからは。今度の狂言も
当りませうと。つひ作者言葉をいゝ出す
もおかし。扨 某(それかし)銭 万(もふけ)といふは。釼(つるき)の山は。
【注 ぴんと=取り澄まして愛想のない態度をとるさまを表す語。つんと。】