翻刻
【右丁】
余り安いから。盗物てはないかと。感(かん)を付る
仏も有り。地獄からは追々 荷物(にもつ)か来り。
近年にない下直たと。売る程に〳〵。地獄へ
銭かねを引上け獄卒(こくそつ)悪鬼(あつき)に至(いた)るまで
銭をもたぬ、はなく。段々 満宝(おごり)が来て。ちと
晒落(しやれ)かけて見たき。気はあれど。昔より釈迦(しやか)
牟尼仏(むにふつ)の禁(いましめ)にて。遊女(ゆふちよ)の類 決(けつ)してならず。
なぞ仕形(しかた)は有まいかと。よふ〳〵苑【葬とあるところ】頭(そうづ)川岸の。
【左丁】
水茶やの女房を頼(たのみ)。こわ〴〵言ゝ出せは。何かどふしや
したとのうけ。《割書:コレサ》そふした事ではない。これが
出来(でき)まいかと。耳へ口を付ての頼(たのみ)。《割書:アイ》夫は仕方がご
ざりませふ。そんならどふぞ早(はや)くとせつく
ほど。てもせわしないがゑんとなり。闇(くらい)二階へ
交張(ませばり)の屏風(びうぶ)。足のうらへ付て。壱尺ほども
上(あか)るやふな。蒲団(ふとん)に。寒(さむさ)を凌(しの)くといへども。
何が女不自由な。地獄(ちこく)なれは仕方(しかた)なく。是て