翻刻
【右丁】
あつたが。どふした事て此様に。色か替る
とは。是には定めて訳の有事。是は不思議(ふしき)
〳〵と。一 ̄ト人ふたり言ゝ出すと。皆々が騒(さわ)き
出し。極楽中か大 騒動(そうとう)。夫よりも如来(によらい)の
かたへ聞(きこ)へ。是安からざる事也。定めて是
には地獄にて。悪(わる)者の業(わざ)なるべし。早々 地獄(ちこく)
を糺(たゞ)すへしとの事。夫より観音(くはんおん)御使と成。
早々地獄へ立越へ給(たも)ふ。閻王(ゑんわう)は此頃の。銭
【左丁】
もふけで。官女(くわんちよ)を集(あつめ)酒もだん〳〵。たけなわ ̄ニ
及(およ)びし時。只今(たゞいま)観音(くわんおん)入仏(にうぶつ)と。俱生(ぐせう)来り
申上れは。閻王(ゑんわう)は肝(きも)を潰(つふ)し。夜中(やちう)と言ゝ
観音の御使(おんつかい)。是(これ)唯(たゞ)ことならずと待所(まつところ)へ。
大千世界(だいせんせかい)の番頭職(ばんとうしよく)。観世音(くわんぜおん)入給(いりたま)へは。閻王
は月代(さかやき)天窓(あたま)。其外(そのほか)皆〳〵 奴(やつこ)あたま。出(で)るも〳〵
皆 本田(ほんだ)。観音はびつくりし。自分(しぶん)の
頭(かしら)をいじつて見るも尤。扨も〳〵閻王には