翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

新竹斎 5巻 - 翻刻

新竹斎 5巻 - ページ 31

ページ: 31

翻刻

ある日大 臣(じん)にさそはれ此所の水(みつ)心まだ汲(くみ)てもしらぬいづくやと いふあげやへ行けり。御池天狗(おいけのてんぐ)とやらんかこがもとより二人ともに のり出す。例(れい)の天狗(てんぐ)か羽(は)ぶさにつゞく木葉の六兵衛。見ぢんの 久介など。嵐(あらし)に雲(くも)のとぶがごとく。いつさんにかけるほどに。筍斎 駕(かご)の内よりやれ〳〵目がまふ。五リンや壱分の事はいふまい今(ま) そつと静(しづ)にやれといふ。卸(をろせ)さゝやき。もし〳〵途中(とちう)でごさる。 物ごとだまらしやりませい。今(ま)ちつとで壱貫でこざるといへは。夫(それ)は足(あし) もとを見る壱貫とはどうよくじやとわめく。扨(さて)きのどくや。壱 貫町の茶(ちや)やへちかひといふ〳〵たには口につけば。爰にて 茶(ちや)たはこなんどたうべ。ゑもんかいつくろふもおかし。やきゐん のあみ笠(がさ)に人め包(つゝみ)て出る。簡斎 巾着(きんちやく)をひねくるほどに大 臣(じん) 見付て何ぞととへば。銭なけ出(いだ)し茶(ちや)代といふもかなし大臣何 とかゝけふはかはつた撥(ばち)を持(もつ)てきたが。かかおかしひ巴(ともへ)様で ごさんす大臣さらばかか御帰へりにと夕暮(いふぐれ)のかねて用意の尻(しり)か らげ。亭主(ていしゆ)跡(あと)より供すなる。大臣みち〳〵筍にかたる此所 には万かへことばの多(おほき)き所ぞ。下卑(けび)給ふなと云(いへ)は筍さい今のばちの 巴(ともへ)のとは何事に侍る。さればよ。それさへしらで出過給ふな。大こと いふ合点(がてん)がゆかぬか。尤(もつとも)じやととつけもない人ごとの。うはさ 町をひちまがれば。上中下の女郎町道中のはで小袖二つ三(みつ) 四つひとつまへ。かいつまどりて八 文字(もんじ)いつも白足(すあし)のきよらかに かぶろやりてのかつがうのありさま。揚(あげ)や男のともすなど。当時(とうじ) さかんの君と見ゆ。かたへを見れば。さびしさうなる局(つほね)女郎