翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

新竹斎 5巻 - 翻刻

新竹斎 5巻 - ページ 44

ページ: 44

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是は岩屋(いはや)の不動坂(ふとうさか)。狂気の人の往還(わうくわん)也。其方たちも此道へは きちかひの類(たぐひ)かと笑捨てとをれば。筍斎ねめ介 腹(はら)だちて。しら ざる事を知ずとして問(とふ)を笑ふ己(おのれ)ら社。ちゑのくらまに迷(まよ)ふなれとつぶやき   つれがあれば三里もまはるくるま坂(ざか) とはや此くるまを世 話(わ)にひけばねめ介   まんぢう峠(とうげ)あんの外(ほか)なり と立帰り青なみを右に。みぞろか池(いけ)の水鳥(みづとり)をほしのゝさと と詠(なかめ)行ば。市 原(はら)のゝ秋(あき)かぜにあなめ〳〵をいとふなる。屏風 坂こず村雨(むらさめ)に二の瀬(せ)の川や。水まして爰にさすらんきぶね 川さんせうの皮 杉皮(すきかは)にうそのかは迄(まで)越(こへ)々て何がしの寺につ きぬ。仁王(にわう)門より七 曲(まかり)を凌(しのぎ)て。宝前に畏(かしこま)り。南無大悲多門天 我は親(をや)より隠(かくれ)なき。名医の誉(ほまれ)高(たか)けれど。只(たゞ)薮医師(やぶいし)のかぜ あれて。内証(ないしやう)寒(さむく)なるまゝに。しかも火をふく力(ちから)なし。願(ねかはく)は然(しかる)へき ふくをあたへ給はれと丹誠(たんせい)にぬかづくかゝる所へちさき百足(むかで)ひ とつ筍斎か傍(そば)に這(はい)よる。忝なや御ふく下されぬととらへんと。す れは。指(ゆび)さきをしかとさす。さゝれて指をかゝへなから祝(いはゐ)なをす   しつかりとさし下さるゝ御ふく哉百のおあしをつかはしめとて といひて其 夜(よ)は堂前(だうぜん)に通夜(つや)しけり。暫(しばし)まどろむ枕(まくら)の上に。あ らたなる霊夢(れいむ)をかうふる。汝(なんぢ)身(み)の貧(まつしき)を欲。我に祈(いのる)事誠あり よつて此三つのはんじ物を示す。よく考(かんがへ)て仕合(しあわせ)せよ。行末な をも守(まも)らんと。一 紙(し)を給はるとみて。夢(ゆめ)覚(さめ)ぬ。枕(まくら)をみればげにも うつくしき筆(ふで)の跡(あと)にてかんなに書だる物三つあり