翻刻
一 がいきを西にみすてよ
一 ひの字(じ)にゐのよみあり
一 ての上のへの下の水の底(そこ)にすむべし
此三 事(じ)ありて別(べつ)なしひとつも合点(かげん)はゆかねど帰りてこそ
判(はん)ずべけれ。有がたしと再拝(さいはい)し下向しぬ。此後 種々(しゆ〳〵)に案して
信伏(しんふく)す。がいきを西にみすてよとあるは関のひがしにゆけ
と也と是より東(あつま)に住所(すみところ)求(もとめ)たりけり。余(よ)のふたつの判字(はんじ)
の心は。童蒙(どうもう)の慰(なぐさみ)のため熊(わざと)爰にあかさず心を付て解(とき)給へとなり
四 京 歌舞伎(かぶき)の見続(みつゝけ)旅途(りよと)の言伽(ものいひとぎ)
花を見捨る雁(かり)がねの夫(それ)は越路(こしぢ)我は又。お江戸(ゑど)の春にゆくべくは
都の名残今 暫(しばし)。いさ暇乞(いとまこひ)に芝居(しばゐ)見んと。主従(しゆじう)日 毎(こと)四条に
立さわく川 瀬(せ)の浪のよせ大こ。世(よ)になる鶴の一 声(こゑ)を幕に
みするは。村(むら)山が松に太夫のきこえある竹中(たけなか)といふ若女。赫(かく)□(や)
姫の昔おもはれ。冬(ふゆ)ごもりせしなにはづのさくやと名のる
若衆(わかしゆ)方を。今は都の春に匂はせ肩(かた)で風きる嵐三(あらしさぶ)。すゞきを
鰭(ひれ)のある男と讃(ほむれ)は。宇治(宇治)右衛門は。茶つぼほどな眼(まなこ)自慢(じまん)。誰にか
見せん梅(むめ)の丞(ぜう)が。かゝ方の立まはり。踊の惣本寺(さうほんし)道念かねぶつ
話(くど□)願以此功徳(ぐわんいしくどく)けふの切狂言(きりきやうげん)。次の日は又 万代(ばんだい)の池の亀(かめ)や
蓬莱にあふ浦島(うらしま)が命(いのち)もあらば立帰り。小 歌(うた)きくべき佐よ
の介。敵がたの元祖(ぐわんそ)団(だん)七が長かたなぬかりのない芸ぶり。おなし
く見上る天井(てんじやう)が道戯(どうけ)あはう口をたゝきつゞけのおひ出しの
大こ。苔(こけ)に埋(うつみ)て動(うこき)なき。世は岩もとの上手(しやうず)のかたまり。今ぞさか
【参照資料:国会図書館デジタルコレクション>浮世草紙刊行会叢書>第1巻>新竹斎>巻之三-五 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/953502/178】