翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

新竹斎 5巻 - 翻刻

新竹斎 5巻 - ページ 47

ページ: 47

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か親がた。昔(むかし)ながらのしはがれ声。とらぬ音頭(おんとう)に踊はてゝ。そのまた の日はあし引のやまと大路に歩(あゆめ)ば。永き縄手(なはて)のしめかざり。小 松が芝居(しばゐ)春めきて翠(みどり)の畳(たゝみ)花むしろ。八重一 重(え)げに九重(こゝのへ) の雲(くも)霞(かすみ)かさなりかゝる見物(けんぶつ)の。其許におり所は御ざないがい や枝(えだ)がさはりませう御免なれなど。花に縁(えん)ある詞(ことば)。時に取 ておかし。未(まだ)狂言(きやうげん)の始(はじま)らぬほどに。筍斎ねめ介に語る。一とせ 此 芝居(しばい)に藤田(ふちた)皆(みな)之丞といふ若女(わかをんな)の在し。東(あつま)人ときこゑし 学問法師(がくもんほうし)ふかく泥(なちみ)て。かりの枕(まくら)をならべん事を望めとも。是 にあひける人多〱。それと哀(あはれ)はかけながら。皆の丞もえあはて日 かずふりぬ。ある日 彼(かの)法師(ほうし)同朋(どうほう)の僧三人づれにて此桟敷に ゐる脇狂言(わききやうげん)一二番の程は。音なしの滝(たき)の白糸(しらいと)乱(みだれ)たるけしき もみえさりし三 番(ばん)続(つゝき)の口上(こうしやう)過て皆の丞が出ると聞より 一 先(さき)にすゝみ出。あからめもせずまもりゐる。すははしがゝりをによと 出ると。口をたゝ〱事外の物 音(をと)きゝゑず。衆人(しゆにん)皆ぶたひ は見ず。彼(かの)法師(ほうし)をみて。目を引袖を覆(おほひ)て笑(わらへ)ども。心 爰(ここ)に 非(あら)ざれば。みるをもわらふをもしらず。やれ命(いのち)とり物思ひさ せずとも。早(はや)くころせ。つくばねの峰(みね)よりおつるみなの丞 さま。恋(こひ)がつもつて泪(なみだ)のふちとなりますなどいふほどに。皆の 丞も日比の僧(そう)としりて立まはりに。めをみやりてはにつと 笑(わら)ひ。扇(あふぎ)のよすがに招(まねき)なんどしければ。猶(なを)うれしがり堪(たへ)かね 後(のち)は直(たゞち)に立あがり。日本(ひのもと)の開山(かいさん)唐(もろこし)迄かくれ御さない。吉のゝ桜(さくら)のだの藤 田高 雄(を)の紅葉(もみぢ)のちらぬまに情(なさけ)の色を見せ給へ抔(など)。たゞ口なしに囀(さへづり)。手の