翻刻
雨のふみがふり 霰(あられ)のたねが島 猫(ねこ)の忍路(しのびぢ) 竃(かまど)の雁首(がんくび) 雷(かみなり)の落穴(をとしあな)
風の細炉路(ほそろじ) やね屋が井(ゐ)のもとなどいひちらすを。子細(しさい)はととはれて
当惑(とうわく)し大やねに口のあいた侭(まゝ)に。いひ事は云(いふ)たが。己(をれ)も知(しら)ぬと逃(にげ)て帰る
五 病(やまひ)の判事(はんじ)物は富貴(ふうき)の下 地(ぢ)
武陽(ぶやう)に双(ならび)なき大 有得(うとく)人のもとより。あるはんじ物を作(つくり)て筍斎
へ持せ遣(つかは)し此 病(やまひ)を察(さつ)して薬(くすり)を給(た)べといふ。其 絵図(えづ)をみれば
牛車(うしくるま)に大なる団(うちは)をのせたる所。雪中(せつちう)の荻(おぎ)の村立(むらだち)。社檀(しやだん)に鼓(つゝみ)一 挺(てう)
尾花(をはな)の乱(みだれ)たる気色(けしき)。弁慶(へんけい)が勧進(くわんじん)帳よむ所を書たり頓(やがて)て。片端(かたはし)ゟ
判談(はんだん)し薬を添(そへ)て使(つかひ)を帰す。作者(さくしや)披覧(ひらん)する判じ様(やう)の心 我(わが)趣向(しゆかう)露(つゆ)たがはす
判事(はんじ)物の図絵(づゑ)
くるまに大うちは 雪中(せつちう)【左ルビ「ゆき」】の荻(をぎ) べんけいかくわんじん帳
しやだんのづゝみ お花のみたれ
【参照資料:国会図書館デジタルコレクション>浮世草紙刊行会叢書>第1巻>新竹斎>巻之五-五 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/953502/198】