翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

新竹斎 5巻 - 翻刻

新竹斎 5巻 - ページ 73

ページ: 73

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車(くるま)に大 団(うちわ)《割書:つよく風を引たるは|物うし》雪中(せつちう)の荻(をぎ)《割書:あらしさむくて|しはがれ声》 社檀(しやだん)の鼓(つゞみ)《割書:かみのうつは人めに|みえず》尾花の乱(みたれ)《割書:風よりをこるつふりの|ふらつき》 弁慶(べうんけい)が勧進帳(くわんじんちやう)《割書:とめにくき俄(にわか)の|せき》と書て咳(がい)気の薬一 貼(ふく)をそへたり 此人此 頓作(とんさく)に肝(きも)をけし聞及たるより面白(おもしろ)き坊主(ほうず)哉と。此のち 眤(むつましく)語(かたり)て無二の中と成ぬ。ある時筍に云。我 栄花(ゑいぐわ)に遊(あそび)て何わざ にもふ足(そく)せず。されど初老(しよらう)の今迄。子といふものなし何と是に能 薬は有まじきかととふ。斎(さい)答(こたへ)て能薬こそ候へ。拙者丸といふ有 おこがま敷候へど。某(それがし)めに呵(あやか)り給はゞ子どもにふそくあらじ実(げに) 俗(ぞく)に云。万 宝(ぼう)より子ひとりと。まして我等はありそ海(うみ)の浜(はま)のま さご計 数(かす)多(おほく)候へどあかぬ物に侍り。是を聞召とさし出す。見れば   つみ立る宝(たから)の蔵(くら)の梯(のぼりはし)ふたおやそひて子どもかす〳〵 と読(よめ)り。何か薬をくるゝと思ひしに。是は只当座の狂言(きやうげん)信仰(しんかう)ら しくもおもはずなから。御あいさつ満足しぬといひて立ぬ。誠(まこと)に時 を得ては狐(きつね)に虎(とら)の勢(いきほひ)あり。古(いにし)への貧神(ひんじん)今の斎が福力(ふくりき)に。けを されて。いふ程の事なす程のわさ。幸(さいわひ)ならぬなし。彼(かの)歌(うた)読(よみ)し 砌(みぎり)より其人の内室(ないしつ)懐胎(くわいたい)して。玉(たま)のおのこ子をまうけにけり 悦(よろこひ)の余(あま)りに筍斎は是たゞ人に非(あら)ず。つたへきく泉式部(いづみしきふ)能因(のうゐん)が歌 を読(よみ)て雨(あめ)をふらせしためし夫は上代是は来世それは勅命(ちよくめい)是 は凡言(はんげん)ふしぎにも読(よみ)かなへけるよと俄(にわか)に賞翫(しやうくわん)信仰(しんかう)して。偏(ひとへ)に わたもちの神のごとくおもふより。此返礼に大きなる屋敷(やしき)に。いゑ ゐひゞし〱造(つくり)て金筥(きんきよ)の山をつき酒樽(しゆそん)の泉(いづみ)をたゝへて。そこに 住(すま)せ。則(すなはち)一 子(し)のえぼしおやとうやまふ。なにかにつけて。闇(くら)ひこと