翻刻
【右丁頭書】
○唐紙(たうし)裏打(うらうち)の方
うらをうつべき紙(かみ)を羽重(はがさね)にして
浮石(かるいし)にて紙(かみ)のはしをすり切り
くひさき紙(かみ)のごとくすべし四方(しはう)
ともにかくのごとくして粉麩(しやうふ)の
粘(のり)にてつぎて巻(ま)き置(おき)さて唐(たう)
紙(し)うらより水を少(すこ)しはけにて
しめし巻(まき)おくべし又つぎたる
紙(かみ)を唐紙(たうし)の横(よこ)の巾(はゞ)にくらべて
本紙(ほんし)より少し広(ひろ)く切ておき其
後/板(いた)の上に唐紙(たうし)をおき表(おもて)を下
にして刷毛(はけ)にて皺(しは)なきやうに
なでつけさてばしめ【はじめヵ】切置たる紙(かみ)
を取て表を下になし唐紙(たうし)の
裏(うら)にあてさて裏紙(うらかみ)の余(あま)りたる
所を一方/板(いた)に粘(のり)を引てつけおき
粘(のり)をつけたる所は二重(にぢう)にまがらせ
【左丁頭書】
板(いた)の脇(わき)へ引かへしさてうら紙(かみ)の
おもてに粘(のり)を引て上下の角(かど)
をば両(りやう)の手にてとり初(はじめ)のごとく
唐紙(たうし)の上にかぶせかけて上より
水刷毛(みづはけ)にてなでつくるなり此
引かへす時大事なり手しきめば
しはになるによりずいふん手心
をやはらかに引かくべしさて仕廻(しまひ)
たる所はまきよせて又その次も
始(はじめ)のごとく次第(しだい)に打よせすでに
をはりて他(た)の所(ところ)へかけて乾(かわ)かし
おくなりその後(のち)にかはぢをして
日用(にちよう)に備(そな)ふる也
○膠水(にかはみづ)の法 黄膠(すきにかは)《割書:十匁|》
明礬(みやうばん)《割書:五匁|》水《割書:一升|》はじめ膠(にかは)を
水にいれてほとばかしやはらかに
なりたる時/器物(いれもの)の中へ熱湯(にえゆ)を
【右丁本文】
にして置(おく)べしいかなる暑中(しよちう)にても二三日
は腐(くさ)ることなしさて取出(とりいだ)し用る時/兼(かね)て
鍋(なべ)を焼(やき)あつくしおきてそのまゝ入て煮(に)る
なり若(もし)瓶(かめ)より鍋(なべ)へ入るゝ時/間(あひだ)あれば忽(たちま)ち
味(あぢは)ひ損(そん)ずる也
○急用酢(きふようす)の法
一 烏梅(うばい)一合を上々の酢(す)五合に浸(ひた)しおき
梅(むめ)に酢(す)を吸(すひ)こみて酢の尽(つき)たる時よく
乾(かわか)して粉にしたくはへおくべし用ゆる時
この粉(こ)を水に入れば上々の酢(す)となる也
○果物(くだもの)を久しく貯(たくはふ)る法
一 梨(なし)柚(ゆ)蜜柑(みかん)の類(るい)いづれも上々の疵(きず)なき
物を択(えら)み湿気(しつけ)なき床(ゆか)の下(した)を掘(ほり)摺米粃(すりぬか)
【左丁本文】
を厚(あつ)くしき其上(そのうへ)に梨(なし)柚(ゆ)の類をすれ合(あは)
ざるやうにおき上に藁(わら)のはかまをあつく
一遍(いつへん)に敷(しき)べしいかほどにても如此(かくのごとく)段々(だん〳〵)にならべ
て風のあたらぬやうに木(き)の蓋(ふた)をして
おけば久しくしても色(いろ)かはらず風味(ふうみ)もよ
きなり又/枇杷(びは)林檎(りんご)楊梅(やまもゝ)の類(るい)は寒水(かんのみづ)に
薄荷(はくか)一握(ひとにぎり)明礬(みやうばん)少し加(くは)へ入れて壺(つぼ)の中に
漬置(つけおく)べし久しく保(たも)ち味(あぢ)もかはらず又
西瓜(すいくわ)南瓜(ぼうぶら)【左ルビ タウナス】の類は高(たか)き処に釣(つり)ておくべし
久しくして損(そん)ぜず南瓜(ぼうぶら)は竈(かまど)の上などに
釣(つり)おけば来年(らいねん)二三月の比(ころ)まで少しもそん
ぜぬ事妙なりまた橙(かうじ)蜜柑(みかん)などは菉豆(ぶんどう)
の中にすれ合(あは)ぬやうにして入れおくべし
【枠外丁数】四十三