翻刻
あハせ竹にても木にてもうちのばし幅二三分
長サ三寸にきりてよし味噌にだしくハへ煮る
うハ置にらか又ハ何にても見合い 扨湯にし
て入てよしか にいたしけいらんにとり合せうどん
の汁にてけし山升のあんを につけ出
▲きんとん 葛のこを味噌汁をはしらかしさまし
こねて中へけし山升などをすり入ひりとまるめ
もみそ汁にしたて くでん有
▲くず素麺は葛を少し水にてとき とり湯
のかげんにて桶にうつしさまし粉をこねてよし
加減は引上おとしみるに糸になりやうきれぬ程にこねて
がよし切るゝもあしとをし 上々は柄杓のそこに
を指のはいる程あけ其中へ右のこね をいれなべの
湯をよくにやし其中へおとし油断なく湯の下を
たき そうめん色々 はばすいなふにてすくは
水にいれひやしよくあらひ水をさい〳〵かへ ば白く見
事に 也汁は切麦同前くずはならでふ遣
▲麦切は大麦の粉也打 切麦のごとくみじかく切知るうわ
置はそば切のことくにしてよし
▲玉子素麺は卵をあけ白きほうをせんじよくかき
玉子のからにしてすくいほそくをとし 也取上能さまして
よし
〇 茶菓子こしらへ様の事
▲ごぼう餅は牛房をよく湯にしてたゝき擂鉢にて
すりをきもち米六分うる四分粉にさたうをくはへ
ごほうと一つにすり合せさとう へばしるくなり
よき に丸めゆにをしてごま出しの油にてあげ 扨砂
糖をせんじ中へいれ煮 出し 午房さたうのかげん
口傳
▲くず焼餅 葛一升水一升さたう一升三色よく
こね合せみかん程にまろめなべにすこしあぶらを
ぬりさい〳〵打かへしやきてよし
現代語訳
合わせて竹でも木でもうち延ばし、幅二三分、長さ三寸に切ってよい。味噌に出汁を加えて煮る。上に置くのはニラか、または何でも見合わせて。さて湯にして入れてよい。火にいたし、けいらん(餅の一種)に取り合わせ、うどんの汁で煮て、けし(芥子)、山椒のあんを付けて出す。
▲きんとん 葛の粉を味噌汁で溶かし、冷まして練って、中にけし、山椒などをすり入れ、ひと口大に丸めて味噌汁で仕立てる。口伝あり。
▲葛素麺は葛を少し水で溶き、湯加減で桶に移し、冷まして粉を練ってよい。加減は引き上げ落としてみるに糸になるよう、切れない程度に練るのがよい。切れるのは悪い。上等なものは柄杓の底に指の入る程度の穴を開け、その中へ右の練ったものを入れ、鍋の湯をよく沸かし、その中へ落とし、油断なく湯の下を焚く。素麺を色々にしたい場合は、笊ですくい、水に入れて冷やし、よく洗い、水を再々替えれば白く見事になる。汁は切麦と同じ。葛ならでは作れない。
▲麦切は大麦の粉である。打って切麦のように短く切る。上に置くものはそば切のようにしてよい。
▲玉子素麺は卵を割り、白い方を煎じてよくかき混ぜ、玉子の殻ですくって細く落とす。取り上げてよく冷ましてよい。
○ 茶菓子こしらえ様の事
▲ごぼう餅は牛蒡をよく湯がいて叩き、摺り鉢ですり置き、餅米六分、うるち米四分を粉にして砂糖を加え、牛蒡と一緒にすり合わせる。砂糖を加えれば柔らかくなり、よい加減に丸めて茹で、胡麻油で揚げる。さて砂糖を煎じて中へ入れ煮て出す。牛蒡と砂糖の加減は口伝。
▲葛焼餅 葛一升、水一升、砂糖一升、三色をよく練り合わせ、みかん程に丸めて鍋に少し油を塗り、細々と打ち返し焼いてよい。