翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

養生主論 - 翻刻

養生主論 - ページ 12

ページ: 12

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食すべし千金方(せんきんはう)に曰く山中(さんちう)の人は命(いのち)長く海辺(かいへん)の人は短命(たんめい)也 是/魚肉(きよにく)のとぼしきと多きとによつてなりと又 獣肉(じうにく)は我邦(わかくに)の 人の脾胃(ひゐ)には必(かならず)よろしからず冬(ふゆ)の日/或(あるひ)は虚弱(きよしやく)の人/薬喰(くすりぐひ)とて 猪鹿(ちよろく)あるは牛熊(ぎうゆう)なんどの肉(にく)を食して寒気(かんき)を防(ふせ)き又/元気(げんき)を助 んとす大なるひがことなり獣肉(じうにく)いかで人間の精神(せいしん)を助(たす)けんや人は 万物(はんもつ)の長たるもの牛鹿(ぎうろく)の精血(せいけつ)に助けられんやたとへ虚弱(きよしやく)の人 一端(いつたん) 獣肉のために精気(せいき)を得るが如(こと)く覚ゆとも化消(くはしやう)し大便(たいへん)に解(げ)してのちは 精気を保(たも)つことなふして却(かへつ)て胃中(ゐちう)に獣肉の熱毒(ねつどく)残りて決(けつし)て 軽(かろ)きは頭瘡(づさう)疥瘡(ひぜん)を発(はつ)し甚しきにいたりては重き腫物(しゆもつ)となりて 長病(てうびやう)を引出すこと多し必(かな)らず薬餌(くすりくい)とて肉食(にくしよく)をなすべからず且又 食のむら喰(くひ)とて気合(きにかなは)ざる野菜(やさい)にては食を減(けん)じ好(この)める厚味(かうみ)にては 飽食(おほぐひ)する事病を求(もと)むる一/端(はし)なり《割書:予》江戸に居(ゐ)たりしとき浅草(あさくさ)辺に 四十余の道心者(どうしんしや)きはめて貧(まづ)しく住(すみ)たりしが何(なに)の病(やまひ)ともなく俄(にはか)に 虚弱(きよじやく)になり歩行(ほこう)苦(くる)しく杖(つへ)にすかりて居(ゐ)たるに後(のち)は躄(あしなへ)同前(とうせん)に 一歩(いつほ)もあゆみがたくされど貧(まつし)ければ服薬(ふくやく)をなさて悩(なや)み難渋(なんじう)せし を《割書:予》或(ある)とき尋ぬるは汝(なんぢ)は檀家(だんか)にて一時(いちし)に飽食(ほうしよく)等なせし事/毎々(たび〳〵) なかりしや彼者(かのもの)こたへて達者(たつしや)なるうちは近(ちか)き頃(ころ)まで不断(ふだん)に物(もの) 乏(とぼ)しければ適(たま〳〵)供養(くやう)に逢(あふ)ときはむさぼり喰(くら)ふ事/度々(たび〳〵)なり《割書:予》か曰 汝か病根(びやうこん)これなり今日(けふ)より一日に一食(いちじき)ツヽになすべし尤(もつとも)初めは飢(うへ)て 心地(こゝち)死(し)すべく計(ばかり)に堪(たへ)がたかるべしこれを忍(しの)びたらんには必(かな)らず本(ほん) 復(ぶく)すべしといふ彼者(かのもの)夫より一食づゝにして其余(そのよ)断食(だんじき)せしに自然(しぜん) と病(やま)ひ本復(ほんぶく)なしたり都(すべ)て貧(まづし)き人又はたくはつなどにて暮 す道心者などの病あるとき薬(くすり)も得(え)服(ふく)しかね食(しよく)もかつ〳〵にて看(かん) 病人(ひやうにん)もなく戸(と)をさして数日(すじつ)床(とこ)にふしゐるに自然(しぜん)重病(じうびやう)の本(ほん)