翻刻
夫人の生れながらにして強弱あるは草木の
同じ時節に種をくだし同じやうに培ひ同じ
畠に生じて肥痩あるが如し能生長すると能
生長せざるは其種によるなるべし然れども
それ相応に花咲実のり秋に至りて枯る所は
同じことなり是其物の天年の終れるなり
若風雨に逢て吹倒され或は人の為に傷られ
時ならずして枯ることあるは其天年を終ら
ざるなり人亦然り先天【左ルビ「たいないより」】の毒あると毒なきと
によりて強弱あるなり毒ある物は生れながら
弱く病あるものなり《割書:此毒より病ものは|治しがたし》如許者も保
養能ときは受得し天寿は保つものなりまた
生れながら強く無病なる者も後天【左ルビ「うまれてのち」】の毒【左ルビ「とく」】とて
保養あしければ病を生じ《割書:此毒より病者は保養を能し|薬を用れば治するものなり》
天年を保ち得ず半途にて死る者なり是草
木の風雨に逢て時ならずして枯るに同じ愚老
生れ得たる病身にて万事人なみならずされ
ど幸に医家に生れ少しは養生の道をも