翻刻
腸中に気の聚る所ありて其聚る所 胞脹(ほうちやう)【左ルビ「ふくれはり」】し他の
所を推し迫む【左ルビ「せばまる」】故に拘急【左ルビ「ひきつる」】する所もあるものなり
是らによつて腸の位置或は片位し或は上下し少
しく其本位にたがふ《割書:腸は博多(はかた)ごまに糸を巻たるやうに順能ものには|あらず上下左右種々に迂廻曲折したる【左ルビ「めぐり〳〵まがりをる」】ものなり》
《割書:大体魚鳥の|腸に似たり》故に能く按腹【左ルビ「はらをもむ」】すれば其本位に復しその
気の聚るもの散(さん)ず此時は雷鳴し或は水の如くに
鳴りて治す又鍼して治するも同し其鍼眼【左ルビ「はりくち」】より微
の気もれて絞腸【左ルビ「よぢれる」】の本位に復する故なり総て気
の閉塞も甚しき物は生命を損ずる事悪液の
害をなすに異事なし《割書:凡気といふものは雨を帯たる風の|如し其力弱き時は害少しその》
《割書:暴烈なるに至りては強力にして家を倒し垣をも倒す又童子の持遊びに|紙鉄炮と言ふ物あり是は細き竹の後先の節を去り其筒になりたる内へ》
《割書:半より少し先のかたへ嚙たる紙を丸【左ルビ「たま」】に作り細き棒にて推送り又別に一丸を|作りて同じやうに推やる時は其間に包れたる空気次第におし迫められ勢(いきほ)ひ》
《割書:強くなり終には先の丸を激発す【左ルビ「はぢきでる」】其音恰も二三分の|鉄炮の如し気の閉塞して勢ひを増こと大凡是に似たり》蓋風寒暑湿
の類ひ婦人女子富家に生れし者は室居の
手当衣服の備へ如何にも防くへき道あるへし
男子は野外【左ルビ「のみち」】をも往来せざれば立がたき身なれ
ば貴人といふとも天より行るゝの気なれば防く
べき道なきことなり愚老年来外邪に傷られ