翻刻
はかり飲み食ひ殊に貧き者は多くは賤く賤きものは
多くは愚(おろか)なる故彼同類なる人のいふことをば深く信じ心ある
人と医者の云事は却(かへつ)て等閑に聞なして信ぜさる
ものなり是教諭の道さへ意のことくならざる所なり又
少しも病気の模様うと〳〵しければ神 ̄ミ仏 ̄ケの
祟(たヽり)となし或(あるひ)は物(もの)の怪(け)のなすわさなりと籤(みくし)を伺ひ
卜(うらかた)に問ひ巫【左ルビ「みこかんなき」】を信して薬をおろそかにし治療の度を
失ひ軽きは重きに至り思きは生命を失ふに至る
かくのごとき貧家の病者は卑 賤(せん)愚陋(くらう)なれはとて分別
有(ある)人の教諭(けうゆ)に従ひ能此等の所を弁(わきま)へて命(いのち)は大切
なる物と心得かならず誠ある医者(いしや)に託(たく)すべし諸病
ともに等閑にして重きに至れば生命にも係(か)ること
なれば仮初(かりそめ)に取扱(とりあつか)ふ事なかれ
豪家 ̄ノ病不_レ順_レ ̄ニセ治 ̄ヲ
家 富(とみ)豊(ゆたか)なる人は金銀利倍の事にはさとく他事
には多くはうときものなりこれ農工商のみにもあら
す士君子の間にある人にも間々有ものなりすべて
富有(うとく)のものは勢は有なから慮(おもんはかり)浅く惑(まと)ひは却て深き