翻刻
さすつまる所は重症となり給ひ終に身まかり給ふ
事多しこれを要するにすへて貴人の病は己(おのれ)を
尽して残(のこ)すことなしといふは稀にして無 益(やく)の鄭重(ていちやう)【左ルビ「ねんいれていねい」】
に過毎時かの己(おのれ)をつくさず残(のこ)す事あるよりなす方なり
将相豈異種あらんや生れて声を同し長して
俗を異にするまでなり徳行をこそ教へ参らすべ
けれ其身体を養ひ参らすには常人に別(べつ)なる
事はあるべからすこれ前にいふ彼(かの)仕ならしより
其かた〳〵の必ず数寄(すき)好(この)み給はさるの所も無拠な
く給ふ事あるべけれども是みな自然に逆(さか)ふの事
なればつとめて此所に心を用ひ其本 ̄トを思慮(しりよ)し
給はヾ此 弊(ついへ)は改(あらたま)るべし妊娠(にんしん)中より生れ給ふの後
疾病(しつへい)に罹(かヽ)り給ふに至るまでも無益の鄭重(ていちやう)に
過(すき)給はざるやうにありたき御事なり
右三条は初にいへる既に予が撰へる三不治の
抄出にて本編には其詳細を録示(ろくし)せりこゝには
其 概略(かいりやく)を挙(あぐ)その大要を約(やく)すれば貧賤の病
は軽忽なるに時宜を怠(おこた)り富家の病は疑惑(ぎわく)に