翻刻
【右丁】
の気をもつて陰陽相 和(くわ)し百 骸(かい)を養(やしの)ふ又天地
の上にても陰陽相和するときは寒熱(かんねつ)相得て万物(はんもつ)
養(やしな)はれ一身の上にて陰陽相和するときは一身
安寧(あんねい)也 譬(たとへ)は天旱(てんかん)【ひてり】数月(すけつ)なる時は陽気 偏勝(へんせう)して
川流(せんりう)の水気(すいき)乾(かわ)き人身の上にて血液をほろぼす
ときは陽気 偏勝(へんせう)して火動(くわどう)をなす是を火の
亢(こうぶ)るといふ又 霖雨(りんう)数旬なる時は偏勝して水
気多きがごとく人身の上にては陰 有余(ゆうよ)の病
にて水腫(はれ)病(やまひ)或は婦人(ふじん)経閉(けいへい)のごとく天地の間にて
も陰陽偏勝するときは疫癘(ゑきれい)の気行れ人多く病(やみ)て
【左丁】
非情の草木まても茂熟(もしゆく)する事なし
○陰陽 相(あい)反(はん)して人身の働(はたらき)をなすの理
人は一箇(いつこ)の小天地なるが故に清(す)めるは升(のぼ)りて天と
なり濁(にご)れるは下りて地となるの理にて陽は上
に位(くらゐ)し陰は下に有りとおもふべからず是ははじ
めにもいふごとく天地の定位(でうゐ)にて其陰陽は升降(せうかう)【左ルビ:のほりくたり】
開閉(かいへゐ)【左ルビ:ひらきとづる】の気をもつて天地 造化(ぞうくわ)の用をなすもの
にて人身もまた其ごとく胎中(たいちう)にてかたちを
結(むす)びしより陰は上になり陽は下になりたるもの
なり故に升(のほ)らむとする陽気を閉(とぢ)降(くだ)らんとする