翻刻
【右丁】
悪敷(あしき)によりて寿夭(じゆよふ)【左ルビ:ながいきわかじに】有るなり古への人は蝋燭の美(び)
なるがごとく天理にしたがふ故に火の光りよく長(なが)く
灯(とも)る今(いま)の人は蝋燭の悪敷(あしき)といふは天理の養生
を不守して風の吹処雨のそゝぐ処をもえらまず
灯す故に天然のらうそくを灯しつくさずして
たち消(ぎ)へするがごとし或(あるひ)はまた先天(せんてん)の遺毒(いどく)にて
父母よりつけおくりの悪敷も有りて火の灯り
よろしからずしてはやく消(きゆ)るもあり故に自身
に蝋燭のよきと悪敷を知りて風雨(ふうう)を凌(しの)ぎて立(たち)
消(ぎへ)のせざる様(よふ)にする時は天の命(めい)ずる齢(よわひ)は保(たもつ)事 全(まつ)た
【左丁】
かるべし
○長寿(てうじゆ)短命(たんめい)の論(ろん)
むかしの人(ひと)は命ながくして百 歳(さい)の寿(じゆ)を保(たも)てる人
多(おゝ)かりしを後世(かうせい)に至(いた)りては長寿を保(たも)つ人の鮮(すくな)きこれ
いかなる事ぞといふに論語(ろんご)に人之 生(いける)也(は)直(なを)ければなり
罔之(しいて)生(いける)也(や)幸(さいわい)而(にして)免(まぬかれ)たるなりとのたまひしを養生の
道にとりていふ時は此(この)直(なを)きといふは我身(わがみ)にすこしも
私(わたくし)なく直(すぐ)に曲(まが)らざる様(よふ)にするを直(なを)しといひ扨 此(この)
直(なを)きを守る時は各 長寿(てうじゆ)なれども多(おゝ)くはこれを不守
が故に短命(たんめい)なり扨此直きといふは甚心 易(やす)き事