翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

こけぬ津え - 翻刻

こけぬ津え - ページ 29

ページ: 29

翻刻

【右丁】 悪敷(あしき)によりて寿夭(じゆよふ)【左ルビ:ながいきわかじに】有るなり古への人は蝋燭の美(び) なるがごとく天理にしたがふ故に火の光りよく長(なが)く 灯(とも)る今(いま)の人は蝋燭の悪敷(あしき)といふは天理の養生 を不守して風の吹処雨のそゝぐ処をもえらまず 灯す故に天然のらうそくを灯しつくさずして たち消(ぎ)へするがごとし或(あるひ)はまた先天(せんてん)の遺毒(いどく)にて 父母よりつけおくりの悪敷も有りて火の灯り よろしからずしてはやく消(きゆ)るもあり故に自身 に蝋燭のよきと悪敷を知りて風雨(ふうう)を凌(しの)ぎて立(たち) 消(ぎへ)のせざる様(よふ)にする時は天の命(めい)ずる齢(よわひ)は保(たもつ)事 全(まつ)た 【左丁】 かるべし ○長寿(てうじゆ)短命(たんめい)の論(ろん) むかしの人(ひと)は命ながくして百 歳(さい)の寿(じゆ)を保(たも)てる人 多(おゝ)かりしを後世(かうせい)に至(いた)りては長寿を保(たも)つ人の鮮(すくな)きこれ いかなる事ぞといふに論語(ろんご)に人之 生(いける)也(は)直(なを)ければなり 罔之(しいて)生(いける)也(や)幸(さいわい)而(にして)免(まぬかれ)たるなりとのたまひしを養生の 道にとりていふ時は此(この)直(なを)きといふは我身(わがみ)にすこしも 私(わたくし)なく直(すぐ)に曲(まが)らざる様(よふ)にするを直(なを)しといひ扨 此(この) 直(なを)きを守る時は各 長寿(てうじゆ)なれども多(おゝ)くはこれを不守 が故に短命(たんめい)なり扨此直きといふは甚心 易(やす)き事