翻刻
【右丁】
あやつりの人形にたとへば人形を人にたとへ遣ふ者を
天(てん)にたとふる時は人形はもと無心なる者故に天のつかふ
者に任(まか)せ居(お)る故に難(なん)なかるべきを然(しか)るに其人形私を
おこして働(はたらき)をなす時は天理(てんり)に背(そむ)く故に天よりつかふ
処の糸(いと)にみだれをなすが故に大(おゝい)に苦悩(くのふ)しされども
みだれをしらざるが故に無理に動(うごか)んとして段々(たん〳〵)なや
み煩(わづら)ひ終(つい)には其糸きれておのれとたおれたるを是
天命といへるがごとし人々不養生にて身(み)を亡(ほろぼ)し
非命(ひめい)の夭死(わかしに)をなすも全(まつた)く是(これ)に近(ちか)きものか故に
天理のつかふまゝにするを養性とも率性(せいにしたかふ)とも
【左丁】
いふなり
或人(あるひと)問(とふ)人養生の道を守るときは長寿なりと
いへども養生の守りよき人に短命(たんめい)なる有又たま
〳〵養生のまもり不宜(よろしからざる)も長寿(てうじゆ)なるはいかにと《割書:予》
答(こたへ)て云これ誠(まこと)に容易(よふい)の談(はなし)にあらずといへども略(ほゞ)
其理(そのり)をいはん人は百年の齢(よわひ)を保(たもつ)べきものなれども
天理に背(そむ)くが故に短命也されば其養生を守りて
短命也といふ理は曾(かつ)てなしといへども多(おゝ)くは養生
の道にふけりて只 慎(つゝしむ)む【衍】をのみ養生とおもひその節(せつ)に
不及が故に皆養生の道にそむくこれを以てみれは