翻刻
【右丁】
みだりに不及する故に短命なるも有べく又実に
養生のまもりよきといへども生質(せいしつ)虚弱(きよじやく)の上 遺毒(いどく)胎(たい)
毒(どく)のわざにて短命なるもあるべし又養生の守り
不宜して長寿(てうじゆ)なりといふ理は曾てなき事にて
初(はじ)めにもいふごとく多(おゝ)くは慎をのみ養生と心得る故
其意に背(そむ)くにより夭死(よふし)を招(まね)くこと多(おゝ)しまた
もとより養生は人々の節(せつ)を守るにありて世人(せじん)
の見(み)る処(ところ)にては大過(たいくわ)して不養生と見ゆれども
これ其人の節(せつ)に当(あた)りて長寿(てうじゆ)を保(たも)てるもあるべ
くまた生質(せいしつ)壮実(そうじつ)のものにて実に不養生にて八十
【左丁】
迄も生しもの此人もし養生を守る時は百歳(ひやくさい)の
余(よ)にも極(きわ)めていたるべきならむ故に養生を守り
ても短命(たんめい)にて不守しても長寿なりといふは
曾(かつ)てなき事にて只我にうくる処の器(うつは)によりて
彼人の過(くわ)は是人の不及に当り是人の不及は彼人
の過にも当れば只 我節(わがせつ)を知る事養生の大意(たいい)
なるべし
○心(こゝろ)の事
養生の本は心を養ふ事を専務(せんむ)とす然るに其心は
人々一身の主宰(しゆさい)とするものなるを其理を不知して