翻刻
【右丁】
に心を用ひずもしこれを他事(たじ)に用る時は体用たがふ
が故にまた小人(せうじん)は《振り仮名:不_レ知_二 天命_一而不_レ畏狎_二大人_一侮_二聖人|てんめいをしらずしておそれずたいじんになれてせいしんのことを》
《振り仮名:之言_一|あなとる》との給ひて是(これ)を小人とも云也故に此 体(たい)用(よふ)を
考(かんが)へて心の運動(うんどふ)をなすときは自(おのづから)性(せい)にしたがふ故養生
の理にかなふなり
○養生(よふぜう)といふ事
生(いけ)るを養(やしの)ふと書て養生と読(よめ)ども又 性(せい)を養(やしの)ふと書て
養性(よふぜう)と読(よ)めりされば人々の天よりうけたる処の性(せい)を
養育(よふいく)するといふ事にて是養生の二字を体(たい)用(よふ)に分(わか)つ
ときは生は体(たゐ)にて養(やしなひ)は用(よふ)也故に我(われ)に固有(こゆう)する処(ところ)の
【左丁】
性(せい)を知りて其性を養ふ事を知るを養生とはいふ
されば養(やしなひ)の一字はまことに肝要(かんよふ)の儀(ぎ)にて扨其性は人々
ひとしからざるもの故に其性の位を知りて養(やしの)ふを
節(せつ)とす只みだりに慎(つゝしむ)をのみ養生とおもはゞ却(かへつ)て
屈(くつ)に落(おち)て養生の意(い)に背(そむ)かん只(たゞ)我身(わがみ)の節(ほどらい)を知り
て其位を守(まも)るをこそ養生の本意(ほんい)とはいふべけれ扨
この節(せつ)を知る事かたきにあらざれど常に心(こゝろ)を不用
時は絶(たへ)て知れがたしすべての事人よりは知れがたき
ものなれども我(われ)より知る事は知れ易(やす)きことくたとへ
ば人常に飲食(いんしよく)するに其量(そのりよふ)七八 椀(わん)も食せざれは足(た)ら