翻刻
【右丁】
必 其(その)芽(め)を生ずるがごとく人の精液も又是に同じく
其 精(せい)よりして子孫を伝(つた)ふまことに一身精微のもの
なれは房事を過度(くはど)しみだりに精液を費(ついや)すは慎(つゝし)む
べきの事ならずや故にまた房事は子(こ)を生(せう)ずるの始(はしめ)
食事は身を養(やしの)ふの元(もと)なれば両事とも尤心を用(もちゆ)べき
事なり然るに是をほしいまゝにする時は害をなし
これを程(ほど)よくすれば子孫(しそん)をつたふその他 身(み)を害せ
らるゝも国家(こくか)を亡すも生 涯(がい)を誤(あやま)る事此一事に
あれば是を慎(つ)しむべきの事なり
○陰虚(いんきよ)火動(くわどふ)の理
【左丁】
俗(そく)に火の亢(たかぶ)るといふはこれ所謂(いはゆる)陰虚火動の事なれ
ど詮(せん)ずるに火の亢(たかぶ)るといふ事はなき事にて実(じつ)は
陰(いん)の虚(きよ)するなり其故は人身にて火といふは陽気陽
の元(もと)は日輪なれば是になんぞ亢(たかぶ)る事あらん人身の
上にてもまた心肺より造(つく)り出す陽気にて別(べつ)に
亢(たかぶ)るといふ事はなく只陰虚するの謂(いゝ)也人身の上に
て陰(いん)といふは血液(けつゑき)の事也 血液【左ルビ:ち うるおい】亡るときは陽 寓(ぐう)する
事あたはずして火(ひ)動(うご)くなり陰陽其位を得(へ)て無
病の人とはいふ也人身に陽気陰血とありて陽は気
にして総身(そうしん)にいたらざる処なく血液も又 流行(りうかう)し