翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

こけぬ津え - 翻刻

こけぬ津え - ページ 49

ページ: 49

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【右丁】 時は正気也傷寒の邪たりといへども天地の正気なり 是を盗賊(とうぞく)にたとへば賊盗といへども家(いへ)に入り物を侵(おか)さ ざるときは常(つね)の人なれども家に入り物を侵す時は忽盗賊 の名を得(う)るがごとし邪気も人身を侵(おか)す時は邪気となれ ども天地の間に有りては正敷(たゞしき)気(き)也さるによつて其邪気 を防(ふせが)んとおもはゞ平生の養生(よふぜう)にあれば此養生の道を 守(まも)るときは病も自(おのづか)らすくなかるべし ○薬を用る心得の事 薬を服すれば命(いのち)ものぶる様に心得(こゝろへ)るは大に誤りにて 薬は病を治すばかりの能(のふ)にて命(いのち)を養ふものにあらず 【左丁】 然るに養生と心得て無病の人 常(つね)に薬を用る事は 大なる誤(あやまり)なり薬種は一能(いちのふ)を以(もつ)て一病をこそ治するもの なれたとへば乱の発(おこ)りたる時夫を禦(ふせぐ)程(ほどの)人数をさしむけ て其乱をおさむるの理にて病のなき人に薬を用るは 軍もなき処へ兵(つはもの)を遣(や)るがごとく若(もし)薬を用 誤(あやま)るときは 南方に敵(てき)の屯(たむろ)せるに北方へ兵(つはもの)をやるがごとく敵(てき)をふせがぬ のみならずいたづらに味方を損(そん)ずべし故に病の道理をしら ずして薬を用る時は実(じつ)を実(じつ)し虚(きよ)を虚するの理あり て病に病を重(かさ)ぬる事有りこゝに一話あり或養生者有 りて大に風邪(ふうじや)の流行(りうかう)せし時なりしが彼養生者おもふに