翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

こけぬ津え - 翻刻

こけぬ津え - ページ 56

ページ: 56

翻刻

【右丁】 熱湯(ねつとふ)といふがごとく邪気と陽気(よふき)は火と水(みづ)とのごとく 相交(あひまじわ)る事なき故邪気の領分(りよふぶん)へは正陽(せいよふ)の気いたること あたわず故に陽気のつもり重(かさな)りたるをさして熱(ねつ)と はいふものなれ然るに胃中の熱邪(ねつしや)などいへるはその理を 不暁(さとさざる)の甚(はなはだ)しきものなり ○発汗の薬を用る時汗の発し様の事 汗はもと人身の津液(しんゑき)にして大切(たいせつ)なるものなるをおほく は汗(あせ)を邪気と心得るは大なる誤(あやまり)といふべし汗は正敷 津液にて一身を養ふものなれども邪気を除(のぞか)んがために 無拠(よきなく)津液に戴(のせ)て押出(おしいだ)すものなれば必汗を邪気と心得 【左丁】 みだりに多く汗(あせ)をすへからず医書(いしよ)にも汗 多(おゝ)ければ病 不除(のぞかず)また汗多ければ陽を亡(ほろぼ)すともありて余(あま)り多(おゝ)く 汗の出るときは邪気の去(さら)ざるのみならず反て陽気を 亡(ほろほ)して危(あやうき)にいたる汗多出て陽を亡すといふ理は陽 気は初(はしめ)にもいふごとく天に皈するが性なれば毛孔(けのあな)より 汗につれて陽気天に皈する故陽を亡すといふまた 人は陽の一気にてはたらきをなすものなれば陽気の 去(さ)るにしたかふて元気おとろふるにいたる故に発汗の薬を 用ひ発汗せんとおもふ時は先薬をせんじおき寝処(ねところ)を かまへ已(すで)に服(ふく)せんとする時右の寝所(ねところ)に入り薬(くすり)をふくし