翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

こけぬ津え - 翻刻

こけぬ津え - ページ 65

ページ: 65

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【右丁】 の陽気(よふき)を表に引く事 強(つよ)く裏の陽気 守(まも)りおろそか にして内より起(おこ)る病 多(おゝ)し扨又北国は日輪に遠(とふ)き故 寒冷(かんれい)の気平生に多(おゝ)くして人身の陽気裏を守る ことよけれとも表の守りおろそかなる故に外よりうくる 病 多(おゝ)し故に湿毒(しつどく)の類(るい)北国に多して南国にはすく なし南国の人は色(いろ)黒(くろ)く北国の人の色の白きも此理 にてまた寿(じゆ)の長短(てうたん)も通(つう)していふときは南国は短命 にて北国の人は長寿なりといふへし扨また海辺(かいへん)に住(す)む ひとは常に魚類を食(しよく)する事多き故毒による病 多(おゝ)く 又 海風(うみかせ)のしめりをうくる故に湿毒の症(せう)も多し山中の 【左丁】 人は深山幽谷(しんさんゆうこく)【左ルビ:ふかきやま かすかなるたに】を往来(おゝらい)し山嵐(さんらん)の瘴気(せうき)にあたり不正の 気をうけて病を生するもの多し此山嵐の瘴気といふは 初(はし)めにもいふことく金を堀(ほ)るもの穴に深(ふか)く入る時さゞひ殻(から) に火を灯(とも)し携(たづさへ)入るに其火 滅(きゆ)るときは人も死すると是 陽気の往来せざる故に灯火忽 消(きゆ)るものにて一切のもの 陽気の往来せざると死するといふは息(いき)の段にいふがごとく 深山幽谷は樹木しげり日の陰 多(おゝ)く鬱(うつ)々として陽気の 往来 徹透(てつとふ)ならざる故に瘴気とて厲気有る也且は狐(きつね)狸(たぬき) のるいも昼(ひる)は陽気(よふき)の為(ため)におされて出(いて)ねども夜になると天 地間の陽気(よふき)かくるゝにより狐狸(こり)はたらきを得るがごとく