翻刻
【右丁】
厲気の行れるも此理にて日陽のめぐり十分ならざるに
よりて厲気(れいき)行れる也故に山中の人は異(こと)なる病あるなり
如_レ此国によりて病もことなる故に治方(しはう)をも異(こと)に
するなり
○湿病(しつびよふ)の事
湿毒(しつとく)を俗(そく)にひゑといふ因(いん)はしめりより出たる気の人に
つひて病(やま)しむる毒にて人に伝染(てんせん)【左ルビ:うつる】或は父母より
伝りたりたるを遺毒(いとく)の湿(しつ)とて至(いたつ)て治しがたしとす医(い)
書(しよ)に此湿毒をは黴毒(はいどく)とありて此 黴(はい)といふはかびといふ
字(し)にて其 義(ぎ)によりて人のからだにかびのはゑたることき
【左丁】
病といふ意扨此かびのはゆる理は麹(かうじ)の花(はな)のごときものにて
湿(しめ)りたるものをむしたつる故かびをなすなり湿毒(しつとく)の病
海辺(かいへん)に多(おゝ)きもこれ魚肉(ぎよにく)を平生に食(しよく)し日夜(にちや)潮風(しをかせ)を
うくる故外よりは塩のしめりの気にて表を閉(とぢ)内よりは
魚肉を食して蒸(むし)たつる故に黴(かび)を発(はつ)する是外より
うけたる湿毒(しつどく)也また内因の湿毒(しつとく)といふは内よりおこり
たる湿毒にて是(こ)の因は平生魚肉 冷物(ひへもの)を好み其上に
飲酒(いんしゆ)を嗜(たし)むもの其酒肉の気内にてむせて湿毒と
なる又平生水辺に居る時は終(つい)には湿毒を発するも此
理にてまた雨露霜雪(うろそうせつ)をうくる猟人(りよふし)などに多(おゝ)し今は