翻刻
【右丁】
心得あるべき事なり尤 湿毒(しつとく)にかきらず一切の病(やまひ)の根(ね)と
なる事多ければ小児初生よりの養ひ様其あらましを記す
小児生れたる時先 臍(へそ)の帯(お)を切る事 余(あま)り短(みしか)く切る事
よろしからずすこし長く切べし扨湯は人はだにし
てつかはす事よし実は産湯(うぶゆ)をつかはす事よろし
からずといへども是皇国の例(れい)として通(つう)してする事
なればつかはすべし余が知る処の小児五人有りし
が是初生の時湯をつかわさす只 穢濁(ゑだく)を拭ふのみにて
七日を歴(へ)て後(のち)初めて湯(ゆ)に浴(ぞく)【「よく」の誤】せし者ありし其小児
生長の後至て壮実(そうじつ)なり然(しか)れども是は不浄の穢濁(ゑだく)
【左丁】
もあれば湯をつかはす事もよし漢土も今(いま)は湯(ゆ)をつか
はす流(りう)もありといふ扨初生の間は衣服(いふく)を余(あま)り厚(あつ)く
覆(おゝ)ふ事よろしからすいさゝか薄着(うすぎ)の方よし多(おゝ)く
見るに初生の時は寒暑のわかちもなくみだりに衣服をおゝふ
これ甚よろしからずたゝ時の気候(きかう)よりはすこしすゝしめに
する事よし保嬰論に小児をそたつるには三分之寒と
三分の餓(うへ)を帯(おは)しむへしとて三分の寒(さぶ)みと三分の餓(ひたるいめ)を
さす事よしとあり故に乳(ち)を呑(の)む内は此 心得(こゝろへ)にて育(そだ)つ
る事よし富貴(ふうき)奉養(はうよう)の人之 虚弱(きよじやく)なるも初生の養様
不宜(よろしからさる)が故による下賤(げせん)の小児(せうに)之壮実なるを見て知るべし