翻刻
【右丁】
とすたとへ重しといへども順痘なる時は三日過て十日迄
の内に下剤を用る事はなき事なり然(しか)れとも至て難痘(なんとふ)
なる時は三日の後十二日前にも下剤を用る事もあれども
是は変中の術(じゆつ)なり初下剤を用る時は裏に発(はつ)する事
なき故声の唖(か)るゝ事もなく裏(り)に発する事もなき故
たとへ外症六ケ敷といへども命にはかゝわらぬものなり兔
角難痘は裏に発(はつ)する事多くして発越(はつゑつ)の勢 悪敷(あしく)
三焦に鬱閉する故に死にいたるなり痘は裏(り)よりして表
へ急におし出す時は難痘にはならぬものなり故にはじめ
下薬を以て裏の毒(どく)を下し其後は急に表へおし出す
【左丁】
事をすべし起発かひなき時は食物に鶏卵(たまご)餅(もち)午房(ごばう)
ねぎの類を食して烈敷(はけしく)発越さする事よし扨又
寒気を恐るゝ故に冬至(とふじ)前(まへ)の痘は至て六ケし其故は
発生(はつせう)の気なく収蔵(しうそう)の気(き)ばかりなる故に難痘(なんとふ)多(おゝ)し
故に其時(そのとき)は外に火を厚(あつ)くして陽気を以て外より
ひく様にし内よりは張(は)り出す様にする事よし痘の
次第を委敷云時は甚長き故略其次第を記すのみ
扨また痘(とふ)に人参を用る事あれども近世の痘(とふ)に人参
を用る事大に害(がい)あり其故は痘(とふ)は裏(り)より発(はつ)する病
なる故に疎通(ひらきつう)ずる事をよろこび閉塞(とぢふさく)事を悪む然るに