翻刻
【右丁】
してみだりに美食(びしよく)するときは先(さ)きにいふ留飲(りういん)のごとく
其不順なる食毒(しよくどく)酒毒より内因(ないいん)の湿毒(しつどく)を発(はつ)す癰(よふ)抔(など)を
発する因も酒肉の不運(めぐらざる)が毒(とく)となりて起る腫物(しゆもつ)なり
或は富貴(ふうき)奉養の人の脚気(かつけ)にて腫満(しゆまん)するは内因(ないいん)の酒(しゆ)
肉(にく)の毒(どく)より発(おこ)る也扨また酒毒食毒にて内因の湿
毒を発(はつ)するはいかにといふに是年来の滋味(じみ)膏梁(かうりよう)の食
毒 腐穢(ふゑ)の物とならんとするとき酒力(しゆりよく)の仮(か)り陽気(よふき)に
て中道(なかみち)まではおくり出せども正陽をもつて化(くわ)する
ごとくならざる故に終(つい)にまた腐穢(ふゑ)のものとなりて
種々(しゆ〳〵)の内因の症をあらはす脚気(かつけ)も内因の脚気は
【左丁】
初めより腫をあらはすこれ汚濁(おだく)の気下 部(ぶ)に溜(たま)り初(はじ)め
是より微腫(ひしゆ)をなすものにて初めは腫(は)れ病(やまひ)と混(こん)じ見え
夫より段々 腫(はれ)をなし終に衝心(せうしん)にゐたる何(いづ)れ腫病(はれやまひ)抔は
起居動作を頻(しきり)にする人にはなきものなり是陽気のし
かけ烈敷故 汚濁(おだく)たまらさるものと見ゆ
○魚肉 滋味(じみ)膏梁(かうりよう)を食して気力(きりよく)を増(ま)しまた病を
発(はつ)するの事
無病なる人は平生魚肉を食して気力を増(ま)すといふ
事尤なる事なれとも是 一概(いちがい)の論(ろん)なり貴賤(きせん)虚実(きよじつ)に
よつて其 分(わか)チありて多(おゝ)くは富貴(ふうき)の人は平生起居動