翻刻
【右丁】
胃中より作(つく)り出す処の津液(しんゑき)濃(こ)くなる故に陽気よくとり
つきてもれざる故に空腹にならざるなり空腹になるの理は
陽気の天に皈(き)するが故なりこれ麤食(そじき)をするときは味(あじわひ)薄(うす)き
故津液も亦うすく陽気(よふき)のおさへぬるき故陽気天に皈(き)
する事早くして空腹になるたとへば厚き味のものを
食(しよく)するときは絹(きぬ)にて張(は)りたるかごとく淡薄(たんはく)【左ルビ:かるきあじ】なる物を
食(しよく)する時は。布(▢▢)にて張(はり)たるがごとし此はりたる物《割書:津液の|事なり》
の麤密(あらきこまかき)によりて陽気の洩(も)るゝに遅(おそ)きと速(はやき)と有る
ものならむ
○五味の説
【左丁】
一切の味は五味にかぎらずといへども其元は五味に出
ざるものなし其五味のはじめは淡味(あわしあじわひ)を本とすこれ水の
味にして淡しき味は味の内にても至て軽(かろ)き味に
して是を□の味ともいふべし万(よろづ)の味は此淡味より
出るなり此 淡敷(あわ▢▢)味の至(いた)り甘(あま)く甘き味の至り辛(から)く辛(から)
き味の至り苦(にが)く苦(にが)き味の至り酸(すき)と知るべし是を陰陽(いんよふ)
に分つときは辛味甘味は陽の味苦味酸味は陰の味なり
然(しか)れども辛き味は陽の至(いた)り甘き味は陰陽かたよらず
平(へい)なる味なれども先陽にちかき味也 苦味(くみ)は陰の至りの
味酸味も陰の味なれども苦味に次(つ)ぎ鹹(しおはゆき)味は陰陽を具(ぐ)