翻刻
【右丁】
いふも木香の苦味を以て痛(いたみ)を治するものにて是も痛
は陽気の行当るものありて行れざる故に痛(いた)むなれば
其行当るものを苦味にておさゆる故に陽の運(めぐ)りを
得て痛(いた)みをやむるなり
○酸味(すきあじ)
酸味(すきあじ)は辛味の裏(うら)にて陰の味にて引聚(ひきあつむ)る味なれば酸(すき)味
の有処へは津液を引聚(ひきあつむ)るなり故に外より用るときは
内の水気を外へひき内より用るときは外の水気を内に
ひくなり故に多(おゝ)く酸味を食すれば痩(やす)るも内より用
る故に津液を内へひき又酸味の物を多(おゝ)く食すれば
【左丁】
下利するも内へ水気を引く故なりまた魚肉を酸(す)に
浸(ひた)すときは肉の白くはぜるも肉中の水気を外の酸
へ引く故なりまた酸貝(すがい)を酸にひたす時は貝(かい)の動(うご)くも
貝の内の水□を外の酸へひかんとすれども貝(かい)は肌(きめ)の
至てこまかにして内の水気出がたき故に貝ともに引
くこれは皆外より引くの理(り)なり
○鹹味(しおはゆきあじ)
鹹き味は元 淡(あわ)しき水に日輪の陽気を以て再(ふたゝび)烝(む)し
塩味となりたるもの故に陰陽を具(ぐ)したる味にて此
鹹味を絶するときは気力(きりよく)衰(おとろ)ふるもの也扨此鹹き味に