翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

こけぬ津え - 翻刻

こけぬ津え - ページ 83

ページ: 83

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【右丁】 陰陽を具したりといふ事いかにといふに鹹き味の性(せい)は陽 なれども水の陰に寓(ぐう)【左ルビ:やどる】する故に鹹味を食して温(あたゝ)むる といふは陽の性にして湿(しめ)るはまた陰の性なりかくいふ ときは一切の物陰陽の性を具するといへども物を食する 時は気ばかりはたらきをなして形(かたち)は気(き)に付ては往(ゆか)ぬ ものなれど此鹹味ばかりは形(かたち)も気(き)もともに運(めぐ)り気(き)の通(つう) ずる処までは達(たつ)する故に一切のもの湯(ゆ)に和(くわ)して用る時 は総身(そうしん)【惣】にゐたらざる処なき也塩味を絶(ぜつ)して腫(は)れ病に治 するも此理にてしまりをとる故に薬のめぐりよきなり ○酒(さけ)の性(せい)《割書:幷ニ》酒の用様(もちひよふ)の事 【左丁】 酒は味 辛(から)く甘(あま)くして性(せい)は熱(ねつ)なるものにて其もとは 米(こめ)を以 醸(かも)し数月(すげつ)を歴(へ)て熟(じゆく)したるもの故に大に天地の 陽気を具(く)し且人身の津液に似て胃中の蕩摩を からずよくめぐりことに味(あじわひ)辛(から)く性熱なるを以て須臾(しゆゆ) □遍身にいたらざる処なし但陰陽ともに具したる 内尤陽気の勝(かち)たるもの故に腹中(ふくちう)に入りて陽気ばかり を第一に提(さゝ)げて人をして醉(よわ)しむ論語(ろんこ)に酒は無量(はかりなし) 不及乱(らんにおよばず)と有りて程を過(すご)さゞるをよしとすよき程に 醉(よふ)ときは心を喜(よろこ)ばしめ鬱(うつ)を散(さん)し醉(よふ)こと度(と)に過る時は 心神乱れて狂人のごとくなる陽気 勝(かち)の性なるもの