翻刻
【右丁】
三焦より発越すること甚しき故に顔色青くなるに
したがふて神気は沈(しづみ)て裏に入り神気さはやかなら
ざるなりまた夜陰(やいん)に酒(さけ)を飲めば下利する事 多(おゝ)し是
いかなれば夜(よる)は人の毛孔(けのあな)ふさがる故に酒陽気外へ出る
事 昼(ひる)のごとくなりがたき故 息(いき)だわしくなるなり酒の
性幷に腹中(ふくちう)に入りての働きかくのごとくなる故に程
を知(し)りて飲(のむ)ときは薬となり過る時は病(やまひ)となるなれば
常に此理をさとして飲(の)むべし扨また食事は多(おゝ)
くすゝむれどもかたち有る物故腹に入りがたき故過
食する事まれなれども酒は消(せう)する杯といひ過(すご)す人
【左丁】
多し酒席(しゆせき)におひてもしひてすゝむるを礼とし客(きやく)
も過(すご)したりとも不苦敷(くるしからす)と心得(こゝろへ)て過(すご)する故 後(のち)大(おゝい)に
害(がい)をなす故に酒客は心得有べき事なり
○味(あしわひ)同じけれども性(せい)変(かわ)れば能(のふ)を異(こと)にする事
天に有りては元気といひ物にうくる時は性といふ人にうくる
時は人の性馬にうくる時は馬の性犬にうくる時は犬の性 烏(からす)
にうくる時は烏の性となりて鶏(にわとり)の鳴声 烏(からす)に似す狗(いぬ)の吠(ほゆ)
る声 馬(むま)の嘶(いなゝき)に混同(こんとう)する事なき是天理自然の性にて
无情(むせい)の草木も亦(また)其理なるが故に薬物(やくふつ)の性といへども
皆是に同じく生(せう)じたるすがたの性を見て咀㕮(そふ)【左ルビ:きり きさみ】し