翻刻
【右丁】
用る時も米は米(こめ)の性の通りをはたらき塩(しを)はしほの性の
まゝを働(はた)らく此理に委敷(くわしく)達する時は品物の性を知りて
其能を知る事亦 明亮(あきらか)也故に同し辛味(からみ)にて芥子(からし)蕃椒(とふからし)
山椒(さんせう)桂枝(けいし)附子(ぶし)の類(るい)各 辛味(からみ)なれども其うけたる性に
より各其能を異にす桂枝(けいし)は枝(えた)なるが故に其辛味 発表(はつひよふ)
に用ひ附子の辛味は根なるが故に胃中(いちう)に入りて其性下
に向(むか)ふ性あり大黄の苦味(にがみ)も山梔子の苦味も同じ苦
味なれとも大黄は根なるが故に下へ向ふて大便を通(つう)し
山梔子(さんしゝ)は実(み)なるが故に胸中(むねのうち)の熱を解(け)するまた其 形状(かたち)
の大小によりて能を異にするの理をいふ時は大黄は大
【左丁】
なる形にて胃中に盈(みち)て下る故 下利(けり)し黄連(おゝれん)は状(かたち)細(ほそ)く
して小なる故に心下(しんか)の痞(つかへ)に用ゆるがごとく痞(つかへ)の時に大
黄を用るときは大なるにすき反(かへつ)ていよ〳〵塞(ふさ)ぐの理
なるか故に黄連を用(もちゆ)るごとく万品(はんひん)気味(きみ)同じきも品物
によりて其能を異(こと)なすればこれを一概(いちかい)に論(ろん)ずへからす
故に平生の食物にも気味同しきも能を異にするあれば
深く心得有べき事にてたとへば⬜︎(ふぐ)【魚篇+豕】は味かろしといへ
ども毒(どく)を存(そん)ずるがことし
◯薬を用ひずして病を治する法
薬せしずして病を治する諸病 各(おの〳〵)其心得(そのこころへ)あり今爰に