翻刻
【右丁】
にも甘蔗(さとふ)の類(るい)にかぎるべからず一切 厚味(かうみ)の魚肉(きよにく)膏梁(かうりよう)の
類又皆 多(おゝ)く食するときは歯(は)を傷(そこの)ふことありこれ歯齦(はぐき)
に陽気をして多(おゝ)く集(あつま)らしむる故に陽(よふ)鬱(うつ)して腐(くさり)
朽(くつる)する也また平日魚肉を食するものは大根生姜を絶(たや)
さず食するも是(これ)歯(は)の朽(くち)ん事を恐(おそ)れての事にて
さとふの類一切味の厚(おも)き魚肉等を食せし後は速(すみやか)に
口を嗽(そゝぐ)べし扨また至(いたつ)て味の厚(あつ)き獣肉(しうにく)等を食(しよく)せし
時は生大根を交(まじ)へ食する事よし又厚味を食せし後
は生大根の汁にて歯(は)を洗ふ事よし扨またたはこ
は余(あま)り能(のふ)なきものなれども歯のためにはよきものにて
【左丁】
是煙気にて陽気の重りたるを退(しりぞく)る故なり論語(ろんごの)不(はじ)
撤薑食(かみをすてずしてくらふ)之 註(ちう)に薑は神明を通し穢悪(ゑあく)を去る故にすて
すとありて漢土は常に肉食する処故に大根よりも又
烈敷(はけしき)生姜を食ふとみゆされども多(おゝ)く食する時は燥(かわ)
かすもの故に多くは不用と見へたり思ふに歯をかたく
せんとおもはゞ平日 食後(しよくご)に湯(ゆ)水の類(るい)にて口を嗽(そゝ)く事
を忘(わす)るへからずされどかくいへば歯は寒冷を好(この)むごとくに
聞(きこ)ゆれとも左にあらず初にもいふごとく厚き味を食する
時は陽気口中へ多(おゝ)く衆(あつむ)るが故に重(かさな)る陽気を退(しりそけ)んが為(ため)
に水にて口 嗽(そゝぐ)也また歯の痛(いたみ)に灸(きう)をする事あり灸(きう)は