翻刻
【右丁】
に略(ほゞ)古(いにしへ)より針に補瀉(ほしや)の理ありといへども補するの理は
なかるべし只(たゝ)瀉(しや)するのみとおもふべきなりされども痛めて
よしとするあり不痛(いたまず)して功(かう)を得(う)るあり深(ふか)く刺(さ)すべき
症あり浅(あさ)く刺(さ)すべき症ありて一 概(がい)に論(ろん)ずべからざれど
痛めてよしとするは麻痺(まひ)【左ルビ:しびるゝ】攣急(れんきう)【左ルビ:ひつはる】して身体(しんたい)屈伸(くつしん)なら
ざるなどの症(せう)には痛を以て功を取る此理いかにといふに是
神気(しんき)陰陽(いんよふ)の往来せざる故に麻痺攣急をなすかくの
ごときの症は痛を以て神気(しんき)を呼(よ)ぶ是神気は人の知覚
する処にて痛 癢(かゆみ)を知るものにて其神気の走(はし)らざる
処は是一邪一 毒(とく)ありて隔(へだゝ)るものなれば如此痛しびれ
【左丁】
を覚(おぼ)ゆ故に針の痛みをもつて神気を呼(よ)ぶ神気の
走(はし)りを得れば陰陽の往来を得て活し或は卒倒(そつとふ)のもの
に針する時至て太(ふと)き針にて随(ずい)分痛る様(よふ)にするこれ又
何(いつ)れ気(き)をとり失(うしの)ふものは辟(へき)する処によりて神気陰
陽の往来を絶(せつ)する故に死(し)せる人のごとくなるものなれは
其時は足(あし)にても腹(はら)にても随分 痛(いた)む処の穴処をゑら
みて刺(さ)して其 痛(いたみ)を知(し)れば神気其針処へ走る故其時
息(いき)を吹かへすなり是皆 痛(いたみ)を以て功(かう)を得(う)るものなり其
外 針(はり)を刺(さす)の浅深(せんしん)は人の肥痩(こへやせ)病の有処により臨機(りんき)
応変(おゝへん)の術(じゆつ)なれば容易(よふい)に論(ろん)じがたしまた水腫(すいしゆ)鼓脹(こてう)の