翻刻
【右丁】
事七壮ばかり此術を毎日する時は生涯無病なりと
いへり尤心を臍下丹田におく事は常に心がくべし如斯する
ときは小腹(せうふく)に力(ちから)つき物事に驚(おどろ)く事なく性質(せいしつ)静(しづか)になる
此術善生の先務(せんむ)なり初め息(いき)の段(だん)にいふことく人は息(いき)の
往来(おゝらい)をもつて生(いけ)るものなれば是よりして病(やまひ)も去(さ)り又病
をうくる事もあり其故は臭気(しうき)鼻孔(はなのあな)より頻(しきり)に入るときは
忽(たちまち)吐をもよふし胃をそこのふ又香気を数(しば)〳〵きくときは
気を下降(けがう)し痞(つかへ)をのぞき食をすゝめ胃を養ふこれ皆気よ
りしてなす処なり又人に伝染(てんせん)する病(やまひ)も其ごとく気より
して伝(つた)ふ其故は一人の病(やまひ)を家内に伝(つた)ふるがごとしこれいか
【左丁】
なれば病人の呼吸する処の息(いき)其 席(せき)にこもりあれば其気
を不病人にも呼吸する故に虚弱(きよじやく)の人は終に其病を伝(つた)ふ
故に平生(へいぜい)といへども寝処(ねどころ)は朝(あさ)ごとに風(かぜ)を通(とふ)し気をして
往来せしめ衣衾(ふとん)なども寝息(ねいき)の臭気(しうき)などなき様に
払(はら)ふ事よしこれをたとへば盆池(せんすい)に魚(うを)を養ふに其水にいさゝ
かの毒気まじる時は忽池中の魚いたむ其時水をかへあら
たむる時は又こゝろよく生(いけ)るがごとし故に空中は魚の水の
ごとし人は気中に居りて呼吸(こきう)を本とするもの故に其
気に疫気(ゑきゝ)交(まじわ)る時は忽(たちまち)病(や)み又其気に不触(ふれざる)ときは不病がごと
し故に虚弱(きよじやく)の人にて熱病の介保(かいはう)などするときは必同