翻刻
【右丁】
とて甲斐弥左衛門尉を徳川殿の御陣にまいらせて此
よしを陳すこゝにまた勝茂かしたしくめしつかひし
久納市右衛門尉といふ郎等ひそかに黒田甲斐守長政の
陣にゆきむかひ主人勝茂か所存のやう一々にのべて
長政のはからひにてつみなためられん事をこふ《割書:としころ|長政の父》
《割書:如水入道勝茂か父直茂|としたしけれはなり》長政久納か志のほとを感し井伊
兵部少輔直政と相議して此由かくと申す徳川殿
聞し召て家康彼父直茂と約せし事ありいかて
その約にたかはんやとてたち所につみゆるされ勝茂
を御陣にめしいそき本国に馳帰り柳川の城せめやふる
【左丁】
へきよし仰下さる《割書:立花左近将監|宗茂か居城也》勝茂大によろこひ
本国に馳帰り父直茂と共に佐嘉の城をうつ立まつ
久留米の城を降して《割書:侍従秀包か|居城なり》柳川にむかひ立花
と戦ふ黒田加藤柳川にはせ来り両陣に使たてゝ
軍を制し立花をすゝめて降参させ加藤か兵にて彼
城を守らせ清正如水鍋島立花か軍勢をおしあはせ
薩摩国に発向す島津また降をこひ戦ふに及はす
引返す鍋島父子柳川にてうちとる所の首六百余
徳川殿に参らせけれは御書を賜てその功を賞せら
れしうへに本領の安堵はいふに及はす大坂の軍