翻刻
毒虫(どくちう)悪気(あくき)を去(さ)るべし又古木 繁(しげ)りたる下にて
飲食(いんしよく)すべからず況(いはん)や烹飪(はうじん)などするは忌(いむ)べき也
夏は木陰(こかけ)を尋(たづぬ)るものなれは梢(こすえ)の様(さま)をみて心得
べし毒虫(どくちう)は夏に多けれは煙(けふり)に畏(おぞれ)ておつる事
あり是を意外の中毒(ちうどく)といふ古洞(こどう)巌窟(がんくつ)に雨(あめ)
露(つゆ)を避(さけ)んとて漫(みだり)に入べからす先火を焚(たき)て後(のち)に
入べし深洞(ふかきほら)に入ことあらば常(つね)の松明(たいまつ)にては煙(けふり)籠(こもり)て
入得(いりえ)ず笹(さゝ)の松明(たいまつ)を用べし洞窟(とうくつ)の毒(どく)は前(まへ)に
いふ所の古井の毒(どく)と同意(とうい)なり野原(のはら)にて火
に包(つゝ)まれたる時は足(あし)もとへ火を放(はな)ち避(のが)るべき所
をはやく焼払(やきはら)ふべし古(いにしへ)日本武尊(やまとたけのみこと)の草(くさ)なぎの宝(はう)
剣(けん)に火打 袋(ふくろ)添(そへ)給ひしは即(すなはち)是(これ)なり燧袋(ひうちふくろ)に用意の
薬(くすり)を入て刀(かたな)脇指(わきさし)の栗形(くりかた)に結(むす)び付(つく)べしと兵家(へいか)の
【上部欄外】
毒煙
【本文】
書(しよ)に見えたり煙(けふり)にむせて死(しゝ)たるは蘿蔔汁(だいこんのしる)
をのむべしこの汁(しる)をふくみて煙(けふり)に入るときは
むせずといふ西洋(さいよう)にては毒霧(どくむ)を打かくるこの