翻刻
兜(かふと)の受張(うけはり)へは樟脳(しようのう)の気(き)をいむ着(ちやく)せしとき
頭(づ)上 熱痒(ねつよう)し甚(はなはだ)しきは昏眩(こんげん)す真綿(まわた)なとに
其気あるを身(み)にまとひては煩悶(はんもん)する必(かならず)疑(うたが)ふ
事なかれ試(こゝろみ)たる事也さなきたに甲冑(かつちう)して
大に働(はたら)く時は逆上(きやくしよう)して眩(げん)するものなり
【上部欄外】
《割書:とけ|ぬき》
【本文】
或(あるひは)鉄鉋(てつほう)にあたりて玉ふかく外科(げくわ)其 技(わざ)を尽(つく)せ
とも玉の出さるまゝに苦(くるし)む江戸本町四丁目中村
伊兵衛といふもの神如散(しんによさん)とてとげ抜(ぬき)の買薬(ばいやく)
あり酒にて用るに玉すみやかに出て平復(へいふく)す此
薬は柿葉(かきのは)梨葉(なしのは)まゆみの葉を土用の中に
采(とり)て黒焼(くろやき)にして酒にて服(ふく)す是 即(すなはち)神如散(しんによさん)なり
とそ度々(たひ〳〵)試(こゝろみ)るに奇験(きけん)あり魚骨(うをのほね)の喉(のど)にたち
たるにもよし諸(もろ〳〵)のとげ抜(ぬき)なり又 芭蕉(ばせを)の葉(は)の
黒焼(くろやき)なりともいふ是は未(いまだ)試(こゝろみす)箭鏃(やのね)の抜(ねけ)かたき
にもよし又 芭蕉(ばせを)の根(ね)を生(なま)にて堀取(ほりとり)なから水
にて煎(せん)し二三 盃(はい)つゝ度々用ゆれは疫熱(えきねつ)を解(けす)と