翻刻
載(のせ)て牛のあゆむほとに動(うごく)と也もし冬月ならは
急(きう)に湿(うるほひ)たる衣を去り塩(しほ)を炒(いり)布袋(ぬのふくろ)に包(つゝ)み臍(ほそ)
の内を熨(の)し厚(あつ)く敷物(しきもの)して竃(かまど)の内の灰(はひ)を取
多(おほく)敷物(しきもの)の上に舖(しき)て溺人(できじん)を其上に覆臥(ふくぐり)せしめ
下に綿(わた)の枕(まくら)をはさみ又 厚(あつ)く灰(はひ)をかけ其上より
被褥(ふすま)を加ふ灰(はひ)の眼目(がんもく)に謎(めい)【目∔迷】せさらん様にするなり
口を開(ひらき)て横(よこ)に筋(はし)【箸ヵ】を含(ふくま)せ蘇香円(そかうえん)を生姜湯(しようがゆ)にて
用ひ管(くだ)を以 耳(みゝ)鼻(はな)肛門(こうもん)を吹 等(とう)の事は夏月の
通(とをり)にすへし冬天(とうてん)には醒(さめ)ぬる後(のち)温酒(おんしゆ)を少(すこし)飲(のま)しめ
夏天(かてん)には少 粥(かゆ)を飲(のま)しむ按(あん)するに灰性(はいのせい)煖(あたゝか)にて能
水を拭(ぬく)蝿(はひ)の溺水死(おぼれし)たるもの灰(はひ)を以 埋(うづ)むれは少頃
にて即(すなはち)活(くわつ)す此 明験(めいけん)なり《割書:蘇香円とあれど皆|解毒丸にてよし》
【上部欄外】
凍死
【本文】
凍死(とうし)【左ルビ:こゞへしぬ】手足(てあし)強直(こはゝり)歯(は)をくひしめたるといへとも微(び)【左ルビ:すこしの】
気(き)ある者は大 鍋(なべ)にて灰(はひ)を炒(いり)て煖(あたゝか)に成たる時
袋(ふくろ)に入て心上(むねのうへ)を熨(の)し冷(ひえ)たらんは又 換(かふ)へし目を
開(ひらく)を候(うかゞひ)て温酒(おんしゆ)及(およ)び粥(かゆ)を少々 与(あた)ふへし若(もし)其心上を