翻刻
韮(にら)の汁(しる)を耳中(みゝのなか)に灌(そゝき)入又 生菖蒲(なまあやめ)を研(くたき)汁(しる)を取
て一盃を灌(そゝき)入る
【上部欄外】
驚死
【本文】
驚怖(きやうふ)して死たるは温酒一両盃を灌(そゝ)く撲打(ぼくだ)して
脺死(そつし)たる及(および)五絶(ごぜつ)ともに心頭(むなさき)温緩(あたゝか)なるは日を過(すぎ)
ぬるも亦 救(すくひ)得(え)たるとなり先死人を磐屈(はんくつ)【左ルビ:かゞめる】して
壱人は死人の髪(かみ)を控(ひ)き半夏末(はんげまつ)を竹筒(たけつゝ)か或は
紙筒(かみつゝ)筆(ふで)の管(くた)にて鼻中に吹へし幸(さいはひ)に活(くわつ)する
時は生薑(しようきやう)自然(しせん)汁(しる)を飲(のま)すへし半夏(はんげ)の毒(どく)を
治(ぢ)すといへり《割書:按に半夏末を諸(しよ)卒死(そつし)に鼻より吹入るゝ事は|皀角末と同法なり然るに半夏の毒を解す》
《割書:ことはこゝにのみ見ゆ拘(かゝ)はるといふべし|五絶とは産(さん)魅(み)縊(いつ)魘(えん)溺(でき)の活法に半夏一味を末にして用ゆ生姜》
《割書:自然汁とは生姜を搗たゞらかし汁を取水を用ひざるもの是|なり以上 洗冤録(せんえんろく)を記する所なりしかあれども五絶と医書(いしよ)に》
《割書:あるは魅(み)と云ものなし墻厭(しようあつ)を加へて五絶といふ|墻厭(しようあつ)は物にしかれたる事也 打撲(だぼく)と法を同しくする也》
陣中には疫病(やくびよう)と脚気(かつけ)腫満(しゆまん)と流行(りうこう)する故心得 居(をる)
へき事也陣中にかきらす士卒(しそつ)の病なりとて
軽々敷(かろ〳〵しく)見なすべからず部下(ぶか)の士卒(しそつ)をいたはるは
古(いにしへ)の良将(りようしやう)のつとめたる所にて人心を得(え)さりむ