翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション3

養生随筆 三冊(上・中・下) - 翻刻

養生随筆 三冊(上・中・下) - ページ 19

ページ: 19

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【右丁】 及て陸納(りくなう)姪(おい)の俶(しく)を杖(つゑ)をもつてうつこと四十 汝(なんぢ)伯父(おぢ)の光(ひかり)を益(ま)すこと あたはず吾(こが)素業(そげう)を穢(けが)すと言(いつ)て盛饌(せいせん)を備(そな)へし事を叱(しか)りし なり是(これ)利休が森(もり)口の侘(わび)人を尋(たつ)ね詣(いた)りしに初(はし)めに柚味噌(ゆみそ) にて酒を出せしを最(もつとも)雅趣(がしゆ)ありと意(おもひ)しに後に暫(しばらく)有てふくら なる肉餅(うまほゝ)を出せしより利休其 心操(しんそう)を俗(そく)なりとして俄(にはか)に 暇(とま)を請(か)ふて罷り返(か)りしと陸納か姪(おい)を叱りしと風情(ふぜい)自(おのつか)ら 符合(ふかう)するなり茶の風流(ふうりう)養生に益(ゑき)ある事多し養生の道は 身心(しん〳〵)を運動(うんとう)するに如(しく)はなし猶《振り仮名: 戸 枢| すう|とくるま》の朽(くち)たるかことし天地日 月の右旋左旋(うせんさせん)常(つね)に運動(うんとう)して已むことなき故(ゆ)に奇妙(きみやう)無(む) 【左丁】 量寿(りやうじゆ)なり人生(じんせい)七十 古来(こらい)稀(まれ)なり飲食(いんしよく)を節(せつ)にして形骸(けいがい)を 勤(つと)むへし形骸(けいがい)を勤(つとむ)れば心気(しんき)活達(くわつだつ)して病(やまひ)を生せす往昔(むかし) 九 條(しやう)内府公(だいふこう)或日(あるひ)御膳(こぜん)を召(めし)上られけるに其 羹(あつもの)の肉に不図(ふと) 蜘蛛(くも)一ッ有けるを見たまひ遂(つひ)にそれより御不予(ごふよ)となり典薬(てんやく) を召(めさ)れて種(しゆ)々と御 薬(くすり)を召上られしも更(さら)に其 効(しるし)なく久しく 御出輿(こしゆつよ)もなかりけるにぞ一日二條 右府公(いうふこう)九條殿へ成(な)らせられて 仰(おほせ)には有馬(ありま)涼及(れうぎう)を召連て然(しか)るへしと勧(すゝめ)め給(たま)ひけれは内府(だいふ)渠(かれ) は 勅勘(ちよくかん)を蒙(かふむ)りし身(み)なれば 上への畏(おそれ)ありとおほせけるに 右府公 渠(かれ)は非常(ひしやう)の奇人(きしん)にて洛中(らくちう)追逐(ついちく)の 勅定(ちよくぜう)なれとも

現代語訳

【右丁】 陸納は甥の俶を杖で四十回打ち、「お前は伯父の名誉を高めることもできず、私の質素な生活を汚した」と言って、盛大な饗宴を用意したことを叱ったのである。これは利休が森口の侘び人を訪ねて行った時、初めに柚子味噌で酒を出されたのを最も風雅な趣があると思ったが、後にしばらくして豪華な肉料理を出されたので、利休はその心構えを俗だとして急に暇を乞うて帰ったのと、陸納が甥を叱ったのとは、風情が自然に一致するのである。茶の風流は養生に益することが多い。養生の道は身心を運動させることに勝るものはない。なお戸の軸受けや車輪が朽ちるようなものである。天地日月の右回転左回転は常に運動して止むことがないので、不思議で無 【左丁】 限の寿命なのである。人生七十は古来稀である。飲食を節制して身体を鍛えるべきである。身体を鍛錬すれば心気が活発になって病気を生じない。昔、九条内府公がある日御膳を召し上がられた時、その汁物の肉にふと蜘蛛が一匹いるのを見られ、ついにそれから御病気となり、典薬を召されて種々と御薬を召し上がられたが、全くその効果がなく、長く外出されることもなかった。そこである日、二条右府公が九条殿へ参られて仰せになるには、「有馬涼及を連れて来るのが良い」と勧められたので、内府は「彼は勅勘を受けた身なので、上への恐れがある」と仰せになったが、右府公は「彼は非常の奇人で、洛中追放の勅定であっても

英語訳

【Right Page】 Lu Na struck his nephew Shu forty times with a stick, saying "You can neither enhance your uncle's honor nor have you defiled my simple way of life," scolding him for preparing the lavish feast. This naturally corresponds in spirit to when Rikyū visited a wabi tea practitioner at Moriguchi - initially he thought serving sake with yuzu miso showed the highest elegant taste, but when later a rich meat dish was served, Rikyū considered such an attitude vulgar and immediately took his leave and departed. The elegance of tea brings many benefits to health cultivation. In the way of health cultivation, nothing surpasses exercising body and mind. It is like door hinges and wheels that decay from disuse. Heaven and earth, sun and moon constantly move in rightward and leftward rotation without cease, thus possessing wondrous and limit- 【Left Page】 less longevity. "Human life of seventy years has been rare since ancient times." One should moderate food and drink and discipline the body. When the body is disciplined, the spirit becomes vigorous and illness does not arise. Long ago, when Lord Kujō Naifu was taking his meal one day, he noticed a spider in the meat of his soup. From that point he became ill, summoned court physicians and took various medicines, but there was no effect whatsoever, and for a long time he did not venture out. Then one day, Lord Nijō Ufu visited Lord Kujō and advised, "You should bring Arima Ryōkyū," but Naifu said, "He is one who has incurred imperial displeasure, so there would be fear toward His Majesty." Ufu replied, "He is an extraordinary eccentric, and though there is an imperial edict banishing him from the capital,