翻刻
体(からだ)をおぎなはずして病を補(おきな)ひ或(あるひ)は薬にて其体を
養ふと心得(こゝろえ)病を子孫(しそん)のごとく大切(たいせつ)になし病 益々(ます〳〵)
盛(さかん)にして終(つい)に身(み)を失(うしな)ふものあり大(おゝ)いなる誤(あやまり)なり胃中(いちう)
の毒(どく)を去(さ)る時は病なし然れば禁食(きんしよく)に及(およ)ばす然れ共(ども)
好む物といへども多く食すれば毒なり米は命を保つ
良薬(りやうやく)なれども多く食すれば脾胃(ひゐ)虚(きよ)して病を生ず
是(これ)則(すなはち)毒薬也 物(もの)の中(ちう)をよしとす身体髪膚(しんたいはつぷ)潤環(じゆんくわん)して
腹中(ふくちう)に毒なきときは無病なり目(め)耳(みゝ)口(くち)手(て)足(あし)のやまひと
いへども皆胃中より発(おこ)り皮表(ひひやう)へ腫物(はれもの)出(いづ)るも胃中也
然るを其 悩(なや)む処(ところ)によりて治療し其 源(みなもと)を攻(せめ)ず既(すで)に
○疱瘡(ほうさう)を見るに初(はじ)め其 毒(どく)を下(くだ)さゞる故に胸膈(けうかく)へ
毒 上(のぼ)り或は毒のため精気(せいき)弱(よわ)きが故 一旦(いつたん)発表(はつひやう)の腫物(しゆもつ)
引込(ひきこみ)て死(し)するあり小児に下剤(げざい)を用るときは体 労(つか)るゝ
と心得(こゝろえ)病を大切にする論(ろん)也胎毒 強(つよ)きは疱瘡 重(おも)く
毒 軽(かろ)きは疱瘡かろし爰(こゝ)におゐて初め其毒を下し
後(のち)発表(はつひやう)の薬を用ひ尚(なほ)胸膈(けうかく)のはるときはいかにも下(くだ)
さずんば介(たすく)るに至(いた)らず小児の乳(ちゝ)を吐(はく)といふも胃中毒
強(つよ)くして食の納(おさま)るべき処に毒有が故に吐(と)す是 吐剤(とざい)