翻刻
を用ふるの症(しよう)○驚風(きやうふう)といへども同じ吐剤を用ゆる時は
速(すみやか)に生(いく)るに至る病によりて五 臓(ざう)六 腑(ふ)に説(とく)といへども理(り)を
説 而已(のみ)にして見難(みがた)きのみ世間に家伝秘法と称(とな)へ或は
一子相伝又は神仏の夢想(むさう)と名付て悉(こと〴〵)く秘(ひ)する
事医道を弁へざる賤き志なり病を治すべき薬は後世
迠も多く人に伝へるこそ仁也全く一箇にして金銭を
貪(むさぼ)るの欲(よく)也是天地自然の理(り)を弁(わきま)へさる也天地の空(くう)
中に生ずる造化の人体有て中空也水火風にて性を
なす火風は形(かたち)なし物によりて形をなす《割書:水は其形を見る火|は木を焼(やく)によりて》
《割書:形をみる風は木に|よりて音をなす》水気(すいき)は体(たい)に充満(しうまん)し発熱(ほつねつ)する是 火(ひ)息(いき)す
る是風体を自在(じざい)にし言語(くちをきく|げんぎよ)する是空中の玄(けん)也天地
万物(ばんもつ)を造化(さうくわ)すといへども気(き)より生ずる一物にして論(ろん)
じ難(がた)し金(かね)は重(おも)きものといへども空(くう)有(ある)時(とき)は水上(すいしよう)に浮(うか)ぶ
生物(せいぶつ)と死(し)物と異(ことなり)といへども理(り)は同意(どうゐ)にして人の体(からだ)に
空あればこそ性(せい)をなす然るを魂魄(こんはく)有(ある)ものと思ふが
故(ゆへ)に病毒を攻(せむ)るの術(じゆつ)を失(うしな)ふ実(じつ)に魂魄有ものなれば
婦人 孕(はら)む時(とき)何(いづ)れよりか魂魄 飛(と)び来(きた)るや魂魄は阿呍(あうん)
にして又 説(とき)がたし無心(むしん)は養生(ようじやう)の基(もとゐ)事に労煩(らうはん)なす