翻刻
人是 急(きう)に病毒をさらざる故也 薬毒(やくとく)残(のこ)りて害(かい)を
なすと思(おも)ふものあり是 精気(せいき)有事(あること)を知(し)らざるなり
精気は毒を受ず食傷(しよくしやう)して吐事を弁(わきま)ふべし病
毒のさるまで薬を用ひずして半途(はんと)にて止(や)め病 動(うご)
くが故 害(がい)をなすを薬毒と思ふは是世事の理
談(だん)を弁ふべし《割書:世の中の入組(いりくみ)たる掛合(かけあひ)そのつまる所 迠(まで)掛|合はされば小事も却て大事となるにひとし》
口当(くちあたり)よき薬 永(なが)く用ゆる時は病にあたらぬ故病
を助(たすけ)て体(たい)を損(そん)ず病を動(うごか)す時は苦(くる)しむ永く捨
置(おい)て命を縮(ちゞむ)るよりは少々(すこし〳〵)苦(くるし)みても愈(いゆ)るこそ本
意(ゐ)なれ人酒を呑(のみ)て酔(ゑふ)事は知れど薬を喰(くら)ふて
酔事を知らず命(いのち)を失ふ程(ほど)の病毒 酔(ゑは)ずんばその
毒さりがたし《振り仮名:於_二于爰_一|こゝにおいて》薬(くすり)《振り仮名:𥈅眩|めんけん》#1せずんば其病 愈(いゑ)ずど
聖人(せいじん)の説(とく)也体を養(やしな)ふは食命を縮(ちゞむ)るは房事(ほうじ)病
中病後 禁(きん)ずるは婬事(いんじ)也多病の人あり一病を治
して余(よ)の病は余の薬をもて治すると心得(こゝろえ)ること不
明也 譬(たとへ)ば痰(たん)癪(しやく)頭痛(づつう)疝気(せんき)抔(など)と種々(さま〴〵)病有人その病
別々(べつ〳〵)と思ふ是 己(おのれ)の体(からだ)有事を知らぬと見えたり
食すれば胃中へ納(おさ)#2り酒を呑(のむ)胃中へ納り薬をのむ